楽しい記憶

天体写真や花鳥風月の写真など

EOS RPによる春の銀河写真

2022年12月から天体写真を始めて、前回の記事ではCanon EOS RPと7cmF6屈折望遠鏡による直焦点撮影で冬の散光星雲を撮影した記録を紹介しました。

今回は、ベランダからのオリオン座周辺撮影が時期的に不可能になってからの春の銀河撮影に挑戦した記録です。本当はアンドロメダ銀河の撮影をしたかったのですが、時期が間に合いませんでした。

春は冬の天の川がちょうどよい時間帯で見れなくなり、夏の天の川が見えるようになるまでの過渡期で、必然的に銀河や星団が撮影対象になります。

しし座トリオ銀河

春の銀河といっても7cmという小口径。初心者にも手軽なメジャーな天体として最初に選んだのは、ベランダからも撮れる「しし座トリオ銀河」。しし座の足の付け根シータ星の南に位置しています。右下のM65、左下のM66、最も北に位置するNGC3628という3つの個性的な銀河が、2等辺三角形の頂点に位置し、同一写野に収めると面白い写真になる有名な天体です。

ちなみに私のグログで紹介する私が撮影した天体写真は、全て上が北です。

M65,66,NGC3628,3593

<1枚目諸元>

●機材:
EOS RP hkir , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
フィルター無 , スカイメモSW , QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
●支援ソフトウェア:
PHD2による1軸オードガイド , BackYardEOSによる撮影
●撮影地:神奈川県茅ヶ崎市自宅ベランダ
●撮影日:2023/2/28
●撮影条件:ISO800 , 120sec X 20コマ(総露光時間40分), ディザリング
●編集:
sequqtorによる明るさ調整・加算平均合成   ,
PaintShopPro7.04によるトリミング(フルサイズ換算焦点距離1120mm相当)等

 

右下に、小さくNGC3593という銀河が写っています。銀河撮影なのでQBPは使わず、フィルター無しで撮影しました。最初は月の無い別の日に10コマ撮影しましたが、露光時間が明らかに不足でした。最も明るいM66でも見かけの明るさが8.8等級と暗いためだと思います。上の写真は月齢7.8の月が西にまだ残っている日に20コマ撮影しました。

3天体ともに個性的で面白い写真になりました。余談ですが、私の持っている望遠鏡による眼視では当然ながらどの天体も全く見えません。見えない天体の導入方法は色々ありますが、私はステラリウムというフリーのソフトウェアを使っています。この方法はスカイメモのように自動導入機能が無くても大丈夫です。導入法については別の機会に紹介します。

今まで紹介した写真で望遠鏡による眼視が出来た天体は、M42,43ぐらいでしょうか。有名な散開星団はもちろん眼視できます。プレセペ星団は本当に感動しますし、M42オリオン大星雲の中にあるトラペジウムは写真ではなかなか写りませんが、眼視だときれいに分離して見ることが出来ます。

おとめ座M61

次に紹介するのは、おとめ座銀河団に属していますが、中心からは少し南にあるM61。ベランダから撮影できますし、おとめ座銀河団の中では比較的大きく視直径6'です。しかし大変淡く9.6等級しか無いため、大変苦労しました。

M61

<2枚目諸元>

●機材:
EOS RP hkir , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
CBPフィルター, スカイメモSW , QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
●支援ソフトウェア:
PHD2による1軸オードガイド , BackYardEOSによる撮影
●撮影地:神奈川県茅ヶ崎市自宅ベランダ
●撮影日:2023/3/15
●撮影条件:ISO800 , 180sec X 31コマ(総露光時間93分), ディザリング
●編集:
sequqtorによる、明るさ調整・1x1加算平均合成・2x2加算平均合成
2x2のファイルをPaintShopPro7.04で2倍にサイズ変更し、sequatorで1x1のファイルと加算平均合成
PaintShopPro7.04によるトリミング(フルサイズ換算焦点距離4100mm相当)等

 

総露光時間93分と頑張ったのですが、あまりS/Nが上がらなかったので、2x2のソフトウェアビニングを行った画像を2倍にサイズ変更し、ビニングしていない画像と合成するという手法を使いました。ソフトウェアビニングは、周辺画素を統合する処理で、淡いシグナルレベルを上げる効果が有ります。しかし、細かい構造が失われるリスクも有ります。もともと細部構造を捉えられていない大雑把な画像には有効だと感じました。sequatorにはソフトウェアビニング機能があるので、それを使いました。今回は、サイズをビニング前の画像に合わせるため2倍にサイズ変更したビニング画像ファイルをビニングしていないファイルとsequatorで最終的に合成しました。これで腕の構造が何とか表現できています。

それと今回の写真ではCBP(Comet Band Pass Filter)というナローバンドフィルターを使用しています。これは、QBPと同じサイトロンジャパンが出したフィルターで、QBPフィルターが通す波長域に加えて、CN, C2, C3付近の輝線も透過するように設計されています。ターゲティングした波長域以外はカットするナローバンドフィルターですから、光害カットに有効ですが、各帯域がQBPより広く光害カット能力はQBPに劣ります。しかし彗星以外にも銀河撮影にも有効なので最近多用しています。

南と北の回転花火

ここからの2枚は、「南の回転花火銀河M83」と北天に位置する「回転花火銀河M101」です。どちらも上から見たフェイスオン銀河で、人気の天体写真ターゲットです。でも見た目はずいぶん違います。そもそも巻き方が反対です。M101の大きさは27'X26'、M83は11'X10'とされています。どちらも8.2等級と、しし座トリオやM61よりも明るいので、最初は楽に撮影できると思っていました。しかしそうでもありませんでした。M83は南天低く、M101は大きいのですが薄く広がっているような感じでした。またM101は南中が天頂付近になるため、スカイメモだと辛い。。カメラと三脚が干渉するんです。

南の回転花火銀河 M83

<3枚目諸元>

●機材:
EOS RP hkir , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
CBPフィルター 無/有 , スカイメモSW , QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
●支援ソフトウェア:
PHD2による1軸オードガイド , BackYardEOSによる撮影
●撮影地:神奈川県茅ヶ崎市自宅ベランダ
●撮影日:2023/3/31(①②) , 2023/4/12(③)
●撮影条件:ISO320 ,
 ①CBP有 180sec X 19コマ(総露光時間57分) , ディザリング
 ②CBP有 240sec X 13コマ(総露光時間52分) , ディザリング
 ③CBP無 180sec X 25コマ(総露光時間75分) , ディザリング
●編集:
①②③ともにsequqtorにより明るさ調整・1x1加算平均合成・2x2加算平均合成
①②③の2x2ビニング画像ファイルをPaintShopPro7.04で2倍にサイズ変更
①②③の各2ファイル計6ファイルをsequatorで加算平均合成
PaintShopPro7.04によるトリミング(フルサイズ換算焦点距離2150mm相当)等

 

このM83写真がPixInsightを使わない最後の写真となりました。この後の写真はPixInsightを最初から使用しています。M83は、うみへび座の尾の近くに位置していて、赤緯 -29°52′と南の低い位置なので、家のベランダでは物凄く公害の影響を受けます。なにせ Light Polution MapのSQM=19.13 mag./arc sec2になる公害地ですので。結果こんな条件でやっとここまでという写真です。色の詳細が全く表現できていません。また、星像もぼやけています。フィルター無しも撮影した理由は、拾えない情報を追加できるのではないかと考えたからですが、徒労に終わった感じです。

 

回転花火銀河 M101

<4枚目諸元>

●機材:
EOS RP hkir , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
CBPフィルター 無 , スカイメモSW , QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
●支援ソフトウェア:
PHD2による1軸オードガイド , BackYardEOSによる撮影
●撮影地:神奈川県茅ヶ崎市自宅近く農道
●撮影日:2023/4/10(①) , 2023/4/13(②)
●撮影条件:ISO320 ,
 ①②ともにフィルター無し  , ①②計180sec X 30コマ(総露光時間90分)
  , ディザリング
●編集:
PixInsightで加算平均合成後トリミング(フルサイズ換算焦点距離1510mm相当)等

 

M101は北斗7星を構成する2等星ミザールの北東近くに位置しており、比較的街の公害を受けにくい天体です。でもベランダからは見えないので、近所の農道に遠征して撮影しました。この時はフィルター無しで撮影しました。細部も良く映っており、星像も締まった感じで、まあまあの写真なのですが、2日間かかってしまいました。理由はカメラと三脚の干渉です。PHD2のガイドグラフが突然おかしくなり、原因を調べているうちに時間だけが過ぎていきました。やっと干渉が原因だとわかった時にはもう夜半過ぎ。仕事のことを考えて2日かけることにしました。

スカイメモには、専用三脚と微動雲台の間に入れて高さを増やすための専用ピラーが用意されていません。直焦点のために屈折望遠鏡のドローチューブに取り付けたカメラの合焦位置は、大きくチューブが引き出された状態となるため、天頂付近だとカメラは極端に低い位置になります。天の北極より北に位置するM101を狙う時は、東側か西側に望遠鏡を配置しますが、東側に配置するとカメラが三脚に微妙に干渉するため西側にならざるを得ず、そうすると自動追尾する望遠鏡は西に回るので、1時間程度で今度は西側で干渉する。。という事態になるのです。

これを根本的に解決するのは、ピラー付の赤道儀に買い替える事ですが、もう少し先かな。。

近況

ところで、最近冷却カラーCMOSカメラを購入しました。最初EOS RPを購入した時はその存在も知らずに買ってしまったわけですが、天体写真専用カメラが存在していたとは驚きです。冷却面と放熱面が異なるペルチェ素子の発達によるものだと推測しますが、当然はじめはCCDセンサーだったようです。価格で有利なCMOSセンサーに置き換わってきたのだと思います。

私が購入したのは、ZWOのASI294MCProという製品です。センサーサイズはマイクロフォーサーズですが、EOS RPより画素密度は高く、さらにその低ノイズ性能により、もっと良い銀河写真が撮れると思って購入しました。このカメラを使った写真の紹介は次回からです。驚くほどの結果が出ています。

ちなみに最近話題のM101に出現した超新星SN2023ixfは、2023/5/20に発見されたのですが、上記カメラを使って、発見の3日前2023/5/17にM101を撮影していました。ひょっとしてこの写真に写ってたりして!って思ってチェックしましたが、当然写っていませんでした。