楽しい記憶

天体写真や花鳥風月の写真など

ASI294MCProによるはじめての銀河写真

今回は、前回記事の「近況」で触れたカラー冷却COMSカメラ「ZWO ASI294MCPro」を使用した銀河写真の紹介です。カメラが手元に届いたのが5/2なのでちょうど1か月ぐらいですが、これまでに主に3種の銀河を撮影しましたのでその写真を掲載します。最初の2天体は前回記事と同じ天体ですので、ぜひ比較してみてください。

webkoza.hatenablog.com

最も最近の撮影機材

下の写真はこのカメラを取り付けた状態の機材外観

 

ASI294MCPro,KASAI BLANCA70-EDT,オートガイダー,スカイメモSW

南の回転花火銀河M83

まず南の回転花火銀河M83です。前回の写真では、フルサイズ換算焦点距離2150mm相当のトリミングでしたが、今回は、M101と同じフルサイズ換算焦点距離1510mm フルサイズ換算焦点距離1368mm相当にしました。

南の回転花火銀河M83

<1枚目諸元>

●機材:
ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
CBPフィルター  , スカイメモSW , QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
●支援ソフトウェア:
PHD2による1軸オードガイド , SharpCapによる撮影
●撮影地:神奈川県茅ヶ崎市自宅ベランダと自宅近く農道
●撮影日:2023/5/9(①ベランダ23コマ) , 2023/5/16(②農道)
●撮影条件:Gain200 , センサー温度 -5℃
 ①②計120sec X 41コマ(総露光時間82分)
●編集:
PixInsightで加算平均合成後トリミング(フルサイズ換算焦点距離1368mm相当)等

 

前回の写真と比べてみてください。星像はよりシャープになり、銀河内の構造やHII領域のツブツブも見えています。しかも総露光時間は83分です。画像処理方法が大きく違うので一概には言えませんが、これはカメラ性能の差が大きく出たと言っていいと思います。

初日は23コマ、2日目は30コマ分の写真をPixInsightのWBPP(Weighted Batch Pre Processing)にかけたのですが、Local NormalizationでInvalid frameが12コマ(いずれも2日目のフレーム)発生しIntegrationされたのは合計41コマだけでした。この原因ははっきりしませんが、LNリファレンスフレームに選ばれたのは、1日目の17フレームから生成された写真でした。1日目は自宅ベランダの宿命として電線が被っています。このリファレンス画像にも右上と左下に電線の黒い濃い影が映り込んでいます。2日目はプチ遠征しているのでもちろん電線は映っていません。「リファレンスの自動生成にはS/Nが最も高くなるファイルを使う」と丹羽さん(*1)のブログ情報に有るのですが、さすがに電線を自動判別できる処理にはなっていないようで、おそらくこれが原因で2日目の12フレームが除かれて41フレームだけがIntegrationされたのだと思います。むしろ良く最後までエラーにならずに完了したということかもしれません。

回転花火銀河M101

2枚目は、超新星SN2023ixfが発見された2023/5/20の3日前の5/17に撮影した回転花火銀河M101です。しつこいですが超新星は映ってませんよ。。

回転花火銀河M101

<2枚目諸元>

●機材:
ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
ZWO IR Cutフィルター  , スカイメモSW , QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
●支援ソフトウェア:
PHD2による1軸オードガイド , SharpCapによる撮影
●撮影地:神奈川県茅ヶ崎市自宅近く農道
●撮影日:2023/5/17
●撮影条件:Gain200 , センサー温度 -5℃
 120sec X 31コマ(総露光時間62分)
●編集:
PixInsightで加算平均合成後トリミング(フルサイズ換算焦点距離1368mm相当)等

 

M101は天頂付近になるのでカメラと三脚の干渉に気を付ける必要が有るのは前回述べた通りで、この日は望遠鏡を東側に配置して導入しようとしましたが、この時刻だと三脚にぶつかってしまうので、仕方なく西側に配置して導入しました。そうすると時間と共に三脚西側部分に近づいていくのですが、最後は数ミリの所まで撮影しました。EOS RPの写真とくらべると、細部の表現が増しており相当良くなっています。

反省としてはCBPを使わなかった事。天頂付近なのでSレベル優先と判断したのですが、おそらく光害によるムラが完全に取り切れず、背景輝度を下げてごまかしているため、いっしょに銀河詳細構造が少し消失している気がします。

M81,82,NGC3077

最後の写真は、M81M82という有名なペア銀河です。この2つの銀河は、外観が全く異なっており、同一写野に入れると面白い天体です。NGC3077も入れてcropしてみました。

M81,82,NGC3077

<3枚目諸元>

●機材:
ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
CBPフィルター  , スカイメモSW , QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
●支援ソフトウェア:
PHD2による1軸オードガイド , SharpCapによる撮影
●撮影地:神奈川県茅ヶ崎市自宅近く農道
●撮影日:2023/5/24
●撮影条件:Gain200 , センサー温度 -5℃
 計120sec X 27コマ(総露光時間54分)
●編集:
PixInsightで加算平均合成後トリミング(フルサイズ換算焦点距離1368mm相当)等

 

この天体はおおぐま座の頭にあるアルファ星の近くにあります。このため、M101よりも低い位置にはありますが、やはりカメラと三脚の干渉には注意が必要です。幸い望遠鏡を東側に配置して導入できたので、撮影中は干渉を気にする必要は有りませんでした。

北西の三日月による公害が有りましたが、これはPixInsightのABEできれいに補正できました。M81はM101より若干小さい(ほぼ同じサイズに見えます)ものの、みかけの明るさ6.94等(Wikipedia)とM101より明るいため、思ったより良く写っており、編集も今までの銀河写真の中で最もうまくいきました。

この3天体はいずれもM81銀河団に属しており、M81と82は数千万年前に最接近しており、M82はM81の巨大な重力の影響で変形したそうです。確かにM82は独特な形をしており、中心の赤い部分も写っています。

40コマ以上撮影したのですが、PixInsightのBLINKで選別してみると、残ったのは27コマでした。単純に星が点になっていないコマを全て除去した結果です。この日は極軸望遠鏡で極軸合わせをした後、PHD2による南天と東天を使ったDrift Alignment(DA)を省略したせいか、ガイド精度が出ませんでした。途中何回か極軸望遠鏡で極軸をだいたい合わせなおしたのですが。。

ASI294MCProは、EOS RPより若干軽いので、スカイメモの微動台座を望遠鏡側にずらして極軸望遠鏡が覗けるようにしても、1kgのウェイトで何とかバランスします。これにより途中の極軸再調整ができるのですが、微動台座があるので明視野照明装置は付けられません。それでも便利なのでDAを省略してこのやり方でやってみたのですが、やはりDAは必要でした。

PixInsightによる編集処理では、リニアフェーズでDeconvolutionにより大気の状況などによってぼやけた星像をシャープにする処理を行うのですが、なぜかこのM81,82写真だけはエラーになって出来ませんでした。複数天体が存在していると失敗しやすいのか。。このprocessはwavelet変換を使用して現状星像の特徴抽出を行うようですが、色々パラメータを振れば解決するかもしれません。しかしパラメータの意味が分からないので諦めました。

*1:PixInsightの使い方[基本編]の作者でブログでも詳しいPixInsight情報を発信してくださっている