楽しい記憶

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Heart & Soul

ハート星雲IC1805ソウル星雲IC1848(胎児星雲)というカシオペア座にある大きな散光星雲を撮影しました。この2つの星雲は比較的接近しているため同一写野に入れて撮影される事が多く、Heart & Soulの名で親しまれています。

ハート星雲(IC1805)

両方の星雲を写野に収めるために、フルサイズの一眼レフカメラEOS RPを使用しました。カメラに近い位置にフィルタードロワーを装着してそこにQBPフィルータを配置したのですが、四隅にケラレが発生し、補正しきれなかったためソウル星雲はボツにして、なんとかハート星雲だけトリミングで救い出しました。その写真が下記です。

ハート星雲(IC1805)

<諸元>

  • 機材:
    EOS RP, BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用0.8xレデューサーII ,
    QBPフィルター Ⅲ, AM5赤道儀  ,
    QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
  • 支援ソフトウェア:
    ステラリウムによる自動導入  ,NINAによる撮影とPlateSolving
     ,PHD2による2軸オードガイド 
    , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
  • 撮影地:
    神奈川県茅ヶ崎市自宅庭先
  • 撮影日時:
    2023/11/8(水)08:15 ~ 23:11
  • 撮影条件:
    Gain200 , センサー温度 -5℃ 
    120sec x 58コマ(総露光時間116分)
  • 編集:
     PixInsightで加算平均合成後トリミング
    (フルサイズ換算焦点距離570mm相当)等

右の方にケラレの痕跡が若干残ってしまっていますが、星雲の構造は細部もまあまあ良く表現でき、ハートに刺さっている矢も写りました。

下記はアノテーション入り画像です。

視直径2°以上もある大きな星雲で、hα線を放つ輝線星雲です。IC1805の距離をネットで調べてみると、約2500光年説と約7500光年説があるようです。距離を推定するのは大変難しいのはわかるのですが、それにしてもその誤差5000光年とは。。

天の川の中だけあって色々な天体が写っていますね。ハート星雲の左にあるのは散開星団NGC1027。8等級以下の微恒星が集まるまばらな散開星団です。右上には、IC1795。別名「魚の頭星雲(The Fishhead Nebula)」だそうです。どれも天の川銀河ペルセウス腕の中にあり、中心にあるMelotte 15と呼ばれる若い散開星団からの放射により水素ガスが電離する時にhα線を発しています。

ソウル星雲(胎児星雲 IC1848)

そして5日後、ASI294MCProを使って撮影したソウル星雲が下記です。

ソウル星雲(胎児星雲 IC1848)

<諸元>

  • 機材:
    ASI294MCPro, BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用0.8xレデューサーII ,
    IRCutフィルター,QBPフィルター Ⅲ, AM5赤道儀  ,
    QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
  • 支援ソフトウェア:
    ステラリウムによる自動導入  ,NINAによる撮影とPlateSolving
     ,PHD2による2軸オードガイド 
    , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
  • 撮影地:
    神奈川県茅ヶ崎市自宅庭先
  • 撮影日時:
    2023/11/13(月)20:25 ~ 22:56
  • 撮影条件:
    Gain200 , センサー温度 -5℃ 
    120sec x 81コマ(総露光時間162分)
  • 編集:
     PixInsightで加算平均合成後トリミング
    (フルサイズ換算焦点距離812mm相当)等

トリミングによりハート星雲より拡大しています。こちらも暗黒帯等の細部構造をまあまあ表現できました。頭部分は淡いのですが、162分の総露光時間が功を奏しました。この星雲は胎児が仰向けになっている様子に見えることから「胎児星雲」という和名が有ります。約6000光年の距離にあり、IC 1805ハート星雲とともに天の川銀河ペルセウス腕にあります。胎児のお腹の大きな丸い領域がバブル状になっていてその膜部分で圧縮されたガスにより星が形成されているのだそうです。胎児のお腹で星が生まれる。。なんかちょっとすごい。

 

アノテーションを確認すると、頭も含めた全体はSh2-199で分類されるようです。この視直径は2°ぐらいありそうです。この星雲も大きいですね。

2つの星雲の場所

下記が2つの星雲の場所を示す図です。hα線は肉眼では見えませんが、夜空を眺めてここに2つの大きな散光星雲が有る事を想像するのも面白いです。

Hear & Soul 位置(上が北)(ステラリウムより)

今回初の試み

今回Heart&Soulの撮影にあたり、色々初の試みをしました。

  1. フィルタードロワーの導入
    これはデュアルバンドナローフィルター購入の事前準備とも言えます。フィルター交換のために、補正レンズを望遠鏡バレル口から抜いて先端のM48ネジ部から外してから違うフィルターを付けて、またバレル口に戻す、という手間は耐えられなくなっていたのです。しかし下記の通りEOSに付けて先端のレデューサーを望遠鏡バレル口に挿入してHear&Soulを撮影したら四隅にケラレ発生。今後はM48延長筒を使用して試す予定。

    baader planetariumの48mmフィルタードロワー

    下記の設定(実際にはさらにドロワーのカメラ側に5mmのM48延長リング装着)にて、ASI294McProを使ったSoul星雲撮影ではケラレは発生していません。

    フィルタードロワーをASI294MCProに装着

    EOSでのケラレについては、以前ドロワーを使っていない時の北アメリカ星雲撮影で同様の経験があります。その時は、周辺収差の最適化実験も兼ねて、今まで使っていた3cmM48延長筒を取り除いて撮影しました。この時の写真はボツにしましたが、あらためて見直すと、今回と同じケラレが発生していました。
    フルサイズセンサーのEOSからレデューサー先端までの距離が短いと、ケラレが出るようです。
  2. NINAの導入
    NINAというフリーの統合ソフトウェアが有るのは知っていました。調べてみてPlateSolvingが出来ると知り、さっそくインストールして使ってみました。使ってみた感想は、設定系が多岐にわたり難しいが慣れれば大変便利なソフトだと感じました。PlateSolvingはSharpCapより時間がかかりましたが、ディザリング撮影もできます。私の様に、電動フィルターホイールや電動フォーカサーも無い人にはあまり恩恵がありませんが、シーケンス撮影もできるのはすごいですね。
  3. 最後の色調整(PixInsight)
    星と星雲をリニア処理段階(ABEとSPCCだけ行った後)でStarnet2で分離して各々BXT,強調処理,デノイズ処理までやってから、Screen Starsスクリプトで合成するフローを確立してからは、星と星雲の色バランスが美しくなった気がします。でも特にQBPを使った星雲では、仕上がりが少し黄色がかった赤になるのが気になっていました。
    そもそも肉眼で見えないhα線をセンサーの中のどの素子で受光して、何色に変換するかという問題なのですが、今回は2つの星雲ともに最後にCurv補正で青を強めてピンク色に寄せてみました。
    今後AOO合成も試したいと思っています。

このブログを書いている途中22時ごろ外を見たら、あれだけ曇っていたのに雲一つ無くなっていました。。もっと早く気づけばよかった。明日から天気が崩れてしかも月没時刻が日々どんどん遅くなってくるので、しばらくは撮影できないかなあ。。