小口径望遠鏡でのDSO撮影には厳しいシーズンとなりました。去年の1月からはじめた直焦点撮影ですが、冬の天の川が去った後、5月に冷却カラーCMOSカメラを購入して、SkyMemoSWを使って四苦八苦しながら銀河撮影に挑戦しました。その時の記事は下記です。
小口径でも狙いやすい、視直径が比較的大きくて明るい銀河の写真3枚です。今回は、この中のM81(ボーデの銀河)とM82(葉巻銀河)をAM5赤道儀を使って、露光時間を大幅に増やすという試みです。でもまだフルタイムで毎日仕事している身にとって、夜半過ぎまでの撮影はなるべく避けたいので、2日間にわたって撮影しました。
仕上げた写真
<諸元>
- 機材:
ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII
(D=70mm,f=420mm), IRCutフィルター,
CBPフィルター(ブロードバンド撮影),
L-eXtremeフィルター (ナローバンド撮影),
AM5赤道儀 ,QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡 - 支援ソフトウェア:
ステラリウムによる自動導入 ,
SharpCapによる撮影とプレートソルビング ,PHD2による2軸オードガイド
, ASI Mount Serverによる赤道儀連携 - 撮影地:
神奈川県茅ヶ崎市自宅庭先 - 撮影日時:
(1)ナローバンド撮影:2024/02/27(火)20:55 ~ 2024/02/28(水) 00:33
(2)ブロードバンド撮影:2024/03/03(日)20:14 ~ 2024/03/04 (月)23:45 - 撮影条件:
Gain200 , センサー温度 -20℃
(1)240sec x 48コマ(露光時間192分)
(2)240sec x 38コマ(露光時間152分)
総露光時間:344分 - 編集:
PixInsightで(1)(2)各々加算平均合成後GraXpertでムラ補正→ブロードバンド画像をSPCCで色合わせ→ナローバンド画像をブロードバンド画像に星位置合わせ→ブロードバンド画像をStar画像(①)とそれ以外(②)に分離しそれぞれBXT→ナローバンド画像からStarを除去した画像にBXT(③)→③からhαとOIII画像を抽出し②にブレンド(④)→①(BXT後のノンリニアStar画像)に彩度増加と星を小さくする処理を行い、④(ブレンド後のノンリニア星以外画像)に彩度増加・Histgram調整・Curv調整・HDRMT・デノイズなどの編集を行ってから合成→トリミング(フルサイズ換算焦点距離2300mm相当)
デュアルナローバンドフィルターのおかげでM81の腕にあるツブツブ状のHII領域も表現でき、電離した水素ガスによるM82の赤いスーパーウィンド(hα線)も良く見えていますが、まだS/Nが足りないと感じます。でも前回の写真と比べるとかなり表現力が増しました。あと2~3時間分ぐらいブロードバンド画像を撮り増したいです。
今回銀河のBXT処理はいつもより控えめにしました。また、M81の腕の構造を見やすくするためにHDRMultiscaleTranseformを行いました。ちょっと暗くなり過ぎた気もしています。
それと今回から、ムラ補正にGraXpertを使用します。過去の何枚かの画像で試してみましたが、ほとんどがデフォルト設定で期待通りの補正が出来てしまうのが凄いと思います。
物理的トラブル対策
FMA135を使ってバーナードループを撮影した時にトラブった、「①抜けやすいカメラ電源用シガーコネクタ」は、GNDの板バネが沈み込み過ぎないようにガラスクロステープを貼って暫定対策。「②赤道儀やカメラのコネクタ部にストレスがかかってしまう事」に対しては、赤道儀のコネクタ面とカメラのコネクタ面に、柔らかい金属性のケーブルクランプを貼ってケーブルを保持する構造にしてバッチリです。
第一の編集トラブル
第一のトラブルとしては、ブロードバンド画像のIntegration後に、長時間撮影で良く聞く「妖怪縮面ノイズ」が出てしまいました。下記がIntegration直後STF Boostedした画像です。最初が写真の上の方で、2番目が下の方です。斜めに走る縮面ノイズがわかります。上と下で角度が異なります。上から下に向かって徐々に右回転しているように見えます。やはり赤道儀の運動由来のものなのでしょうか。ナローバンド画像では起きていないので、庭から北天高い位置を狙う場合の南側にある白色のLED街灯が関わっている?
このノイズはムラ補正では除去できそうにないので、どうしようかと思いましたが、とりあえず、気になっていた「マスターFLATに-20℃では無く-5℃の画像で代用している」事実を解消するべく-20℃でFLAT画像を撮り直してIntegrationやり直してみました。すると、なぜか「妖怪縮面ノイズ」はいなくなりました。(下図)
理由は全くもって不明です。でも今度はFLAT補正が甘く、少し同心円状のムラが残りました。このムラはGraXpertで1発で除去できました。いずれにしても、この妖怪に対しては、ディザリング撮影が有効のようなので、APTを試してみようと思います。(NINAはかなりCPUパワーを食うのと機材を据え付けられない私にとって、自動シーケンス機能は過剰品質ですし。。)
第二の編集トラブル
第二のトラブルはstarnet2。星と銀河を分離して処理したのですが、ブロードバンド画像から取り出したStar画像に、NGC3077の淡い広がりが結構写り込んでしまい、ブレンド後の銀河画像との再合成でその部分が破綻してしまいました。しょうがないのでトリミングでNGC3077を含めない写真としました。前回は分離編集を行っておらずNGC3077も含めた写真に仕上げていました。
第三の編集トラブル
そして3つ目はブロードバンド画像のWBPP処理時、LOCAL NORMALIZATIONでWarningが発生し、Light Frame の Image Integrationで9枚が除外されたこと。
流石にログだけ見ても、原因は特定できそうにありません。BLINKで目視選別したのが47枚だったのに対し、38枚でIntegrationされました。36分も無駄になってしまいました。。
アノテーション画像
M81の視直径はこの写真からは長手18' ほどに見えますが、ステラリウムでは26'54"となっていました。