2024/3/29(金)と2024/4/1(月)の2夜にわたって、りょうけん座の「ひまわり銀河(M63)」を撮影しました。この銀河は、M51銀河群の一員で、M51から視野角にすると30'ほどりょうけん座のコルカロリに寄った所にあります。北斗七星の柄の先端アルカイドからだと50'ほどの距離です。
初めて撮影してみました。この銀河はM51と似たような大きさで、系外銀河としては大きい方なのでしょうが、明るさはM51より0.5等級ほど暗いため、小口径ではかなりきつい対象でした。
仕上げた写真
※ 2024/4/3 再調整し差し替え
銀河部分S字Curv補正実施後再トリミング。これにより周囲ハロの輝度を落として内部コントラストを向上させてみました。
<諸元>
- 機材:
ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII
(D=70mm,f=420mm), IRCutフィルター,
QBPIIIフィルター(ナロードバンド撮影),
CBPフィルター (ブロードバンド撮影),
AM5赤道儀 ,QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡 - 支援ソフトウェア:
ステラリウムによる自動導入 ,
SharpCapによるプレートソルビング ,APTによるディザリング撮影 ,
PHD2による2軸オードガイド , ASI Mount Serverによる赤道儀連携 - 撮影地:
神奈川県茅ヶ崎市自宅庭(1) ,(2) - 撮影日時:
(1)ナローバンド撮影:2024/03/29(金)20:17 ~ 2024/03/30 (土)00:19
(2)ブロードバンド撮影:2024/04/01(月)23:02 ~ 2024/04/02(火) 02:36 - 撮影条件:
Gain200 , センサー温度 -20℃
(1)240sec x 37コマ(露光時間148分)
(2)240sec x 39コマ(露光時間156分)
総露光時間:304分 - 編集:
PixInsightで(1)(2)各々加算平均合成後GraXpertまたはABEでムラ補正、各々SPCCで色合わせ後HDRCompositionで合成。合成前の(2)画像から取り出した星画像をBXT・彩度増加し、合成後の画像から取り出した星以外画像をBXT・HDRTransform・彩度増加・Curv調整・デノイズなどの編集後、星画像と星以外画像をscreenstars scriptで合成。
トリミング(フルサイズ換算焦点距離1820mm2730mm相当)
総露光時間5時間でもこのレベルです。。拡大表示しなければそれなりにきれいな写真だと思っています。やはり銀河を撮影するたびに小口径の限界を感じてしまいます。それでも、細かく締まった渦や、南にある横直線状の暗黒帯は表現できました。
もう一つの特徴である銀河周囲のハロ部分も残してみましたが、細部構造はほとんど表現できていないばかりか、荒くなってしまいました。思い切ってマスクワークでカットして銀河細部構造のストレッチに集中すべきだった気もしています。
ブロードバンド画像をもっと撮り増しすればS/Nは向上するとは思いますが、労力とのトレードオフになりますね。
編集
今回も編集には苦労しました。月が比較的早く上がってくる初日はナローバンド撮影をしたのですが、4輝線を通すQBPIIIフィルターをナローバンド撮影に使ったのは無理が有りました。L-extremeフィルターよりコマ毎のS/Nを稼ぐためだったのですが、今回も銀河内HII領域を強調することはできませんでした。
そこでナローバンドRGB画像とブロードバンドRGB画像は、HDRCompositionで合成しました。Pixmathでブレンドしても良かったかもしれません。
SubFrameSelectorの測定値を参照しながら、Binarizing threshold=0.05 としました。QBPIIIフィルターによる効果としては、銀河下部の横直線状の暗黒帯のコントラストは、ナローバンド画像の方が優っていましたので、その効果も目視で確認できました。
それと、星画像の形が悪いです。リニア段階でブロードバンド画像からstarnet2で星画像を分離した際、M63銀河内のHII領域部分を星以外画像側になるべく残すために、starnet2のP.target_backgroundを小さくし過ぎたためだと思います。。難しい!この値をいじるのは邪道なのか。。?
ナローバンド写真のスタックでは最初のWBPPでもトラブりました。PixInsightでは目視専用ツールとしてBlinkというプロセスがあります。私はこれをずっと使ってきましたが、デフォルト設定のWBPPでエラーが出てスタックできない事が最近多くなってきました。長時間撮影をするようになったからだと思います(コマあたりの露光時間・総コマ数ともに以前より増えたから)。今回もナローバンド撮影画像をWBPPにかける前にBLINKで選別しました。雲通過待ちが多かったせいで薄雲の影響が出ているコマが多く、結構落としたのですが、WBPPのRegistrationでエラーが出てスタックされませんでした。Blink選別した写真をWBPPにかけると下図のエラーが全コマで発生しました。
SubFrameSelectorを使って選別をやり直したらうまくいきました。ただ、Mesurements実行時に下記のワーニングが全画像で出ていました。
ノイズを見積もれないとか、PSFシグナルを見積もれないとか、結構やばそうなコメントですがエラーではないので無視しました。一応SNR・FWHM・Eccentricityの画像間数値比較はできました。謎です。。
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** Warning: Noise estimates are not available in the image metadata and are being calculated from possibly non-raw or uncalibrated data. Image weights can be inaccurate.
** Warning: PSF signal estimates are not available in the image metadata and are being calculated from possibly non-raw or uncalibrated data. Image weights can be inaccurate.
** Warning: Noise scaling factors are not available in the image metadata and are being calculated from possibly non-raw or uncalibrated data. Image weights can be inaccurate.
Stars detected: 140
Valid PSF fits: 140 (100.00%)
===== SubframeSelector: 39 succeeded, 0 failed, 0 skipped =====
02:54.17
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アノテーション
下記は、アノテーション画像です。今回はPGC(Principal Galaxies Catalog)も表示してみました。こんなに系外銀河が写ってるのに驚きです。
天体の場所
最後に場所を示した星座絵です。