楽しい記憶

天体写真や花鳥風月の写真など

PixInsightにおけるstarnet2の仕様など

茅ヶ崎市では天気が悪い日が続いています。明日の金曜日の夜は大丈夫そうですが、久しぶりの出社日。天体撮影は土曜日までおあずけです。M81,82に続く春の銀河の次のターゲットは当然回転花火銀河M101になるわけですが、実は月の有る日に既にナローバンド撮影は終えています。残るはブロードバンド撮影。何時間撮影できるか。。

ということで、今回は画像編集ネタです。と言っても例によって私の備忘録的な記事です。前回トラブルとなった、PixInsightのstarnet2で、NGC3077の銀河中心部が一部星画像側に混入してしまい、星消し画像側のNGC3077がおかしくなった件、その後調べていると、改善方法がわかって来ました。

starnet2の仕様について

starnet2は、リニアデータとノンリニアデータどちらにも使用する事ができます。私の場合、BXT前のリニア画像でstarnet2を使用しています(「Linear Data」にチェックを入れる)。この時対象画像にstfのauto stretchをかけた状態で実施していました。stfなので動作には影響を与えないと思い込んでいたわけですが、なんと実は実施結果はstfのstretchの状態に左右される仕様なのだそうです。この事実は想定外でした。

そして、さらにstfのstretchをかけない状態(リセットを押した状態)でstarnet2をかける事もでき、その場合「Edit Instance Source Code」(下図の赤丸)を押すと、2つのパラメータを設定できます。これにより、結果を調整することができます。

変更可能な2つのパラメータは、starnet2オブジェクトのshadows_clippingとtarget_backgroundの2つのプロパティです。前者は変更しても変化がわかりませんでしたので、後者のtarget_backgroundを変更することにしました。

次の図は、stf auto stretchをかけた状態でstarnet2を実施した星消し画像のNGC3077部分。その次の図はtarget_background=0.05にして実施した星消し画像のNGC3077部分です。

stf auto stretchをかけた状態でstarnet2を実施

target_background=0.05にしてstarnet2を実施

上の方は、銀河中心部がモザイク状に暗くなっています。下は問題ありません。下の設定で進めればNGC3077も写真に含めることができるはずなのですが、全体のバランスを考えると、そう単純では無いようです。

target_backgroundを小さくしていくと、星画像側に星以外が残る現象は軽減するのですが、小さくし過ぎると、星消し画像側の輝星が有った位置にハロのような薄いドーナツリングが現れました。

悩ましいのは、M81のように星と大きさの区別が難しいHII領域(つぶつぶ)を持つ場合です。この場合starnet2では星消し画像側全部のつぶつぶを残す事ができない状況になります。この辺の匙加減が、target_backgroundによって変わるわけです。私の光学系で撮影したNGC3077のようにツブツブが写っていない銀河と、つぶつぶが写っている銀河が混在している場合は特に難しいと思います。今回の写真では、ナローバンド撮影したLight画像の星消し画像側に「つぶつぶ」の全部が残って欲しいのですが、結局上記ドーナツリング現象により完全には無理でした。妥協して、NGC3077も含めた3つの銀河が写る写真を仕上げることはできますが、途中で面倒になってやめてしまいました。

それと、最新版では複数のリニア画像を一気に星消しを行うコンテナ機能が実装されてるそうです。この機能は、彗星写真を彗星核基準でスタックする場合に使えるようです。去年撮影したztf彗星の写真で試してみたいです。かっこいい直線状のイオンテールが浮かび上がれば感動なんですけどね。

去年の通常スタックしたztf彗星の写真は下記。時間が無くて極軸はテキトーなので星は流れています。

GAME Scriptについて

今回上記starnet2の仕様を調査しながら実験を行う過程で、どうしても星画像側に混入してしまった「銀河のかけら」の輝度を大きく減らすために、局所的な自由マスクを作れれば良いなあと思いました。私の場合こういったマスクは、結露などによる円形状のシミを取り除くために、PaintShopPro上でマスク画像を作成してからPixInsightのrange selectionを使ってマスク境界をぼかすということをやってきました。でも例によって丹羽さんの楽しい天体観測で、GAME ScriptなるツールをインストールすればPixInsight上で同じことが実現できることを知りました。

masahiko.me

これは大変便利です。もうPaintShopProをいちいち立ち上げ無くても良くなるからです。局所的な自由マスクが作れるので、変な使い方をすると写真を「作ってしまう」ことになりかねないということは常に念頭に置いておく必要はあります。

さっそくインストールして使ってみました。ほんとわかりやすいGUI で、使いやすかったです。