楽しい記憶

天体写真や花鳥風月の写真など

無改造カメラと暗いカメラレンズによる天体撮影の記憶

今回は、買ったばかりのCanon EOS RPとポータブル赤道儀スカイメモSWの購入検討から購入直後の頃の記憶です。この頃は、無改造のEOS RPと添付されていた暗いズームレンズを使って天体撮影していました。

検討段階

昔はモータドライブを買えず、数十分のシャッター開放中、望遠鏡の視野中心に入れたガイド星を凝視しながら、赤経軸微動ノブを使って手動追尾していた時の苦労を思い出し、はたしてこのポータブル赤道儀はノータッチでどれぐらい行けるのだろうか?という疑問があったのですが、ネット上のレビュー情報では皆さん上手に使いこなしており、好感触だったので購入を決めました。

購入検討過程で、短時間露光で撮影したデジタルカメラの写真複数枚をパソコン上で合成(加算平均合成)して仕上げるのが普通だと知りました。この合成処理の利点としては下記2つ。

  • 1コマ撮影時間を短くすることにより厳格な追尾精度が不要になる事
  • 1コマで写る天体は淡いけどたくさんの写真を合成すればS/N比を上げられる事

また、自動追尾しながら単純に複数枚の天体写真を撮影すると、デジタルカメラCMOSセンサーノイズのパターンがいつも同一になり、加算平均合成後の写真は、センサー固有の独特のノイズパターンが浮かび上がる事が有ります。これを防ぐ工夫として、ディザリング撮影をするのが有効です。これは、1コマ撮影を終えると追尾速度に変化を付けて画角を数ピクセル分ずらす手法です。スカイメモSWには、Wifiアクセスポイントモードが搭載されており、専用アプリをインストールしたスマホで、このディザリング連続撮影が自動で出来ます。

スカイメモSWの極軸合わせ

天の北極に赤道儀の回転軸を合わせることを極軸合わせと言います。スカイメモSWの極軸合わせは、カメラを取り付ける前に明視野照明装置を極軸望遠鏡前面に取り付けて行います。カメラを取り付けると極軸望遠鏡の視野を塞いでしまうので覗けません。明視野照明装置を付けると、北極星を配置する赤い円環状のサークルと十字線が浮かび上がります。次にスマホにインストールしたスカイメモSW専用アプリを起動して、観測地の経度/緯度と時刻に対応した正しい北極星位置を、極軸望遠鏡の明視野画面と同じスマホ画面で確認します。その位置に合うように水平・高度微調整ノブを回します。最後に、歳差誤差調整も行います。これは細い円環状のサークルの中で正しい厚み位置に北極星を移動させる調整ですが、ハッキリ言って無理が有ります。スカイメモSWによる微調整ノブの精度と遊びでは、この細い円環厚みの中で正しい厚み位置に正確に動かす事は至難の業です。なので、なんとなく合わせる程度になります。

 

調達した機材

下の2枚の写真は最初にそろえた機材です。1枚目の機器構成としては、上から、EOS RP+ズームレンズ、ボール雲台、スカイメモSW、微動雲台、専用三脚です。

カメラレンズは、本体に付いていたキットレンズ(24-105mm f4-f7.1)です。

下の写真の双眼鏡はMIZAR BK-8040。8倍40mmです。昔友人が持っていたこのサイズのスタンダードMIZARが大変使いやすく且つきれいな星像だった記憶が有り、これに決めました。ミザールテックは双眼鏡で有名な日本の老舗光学機器メーカーです。スカイメモSWはケンコートキナーというこれも日本の老舗光学機器メーカーです。昔は「ケンコー」でした。ケンコートキナーはレンズフィルターが今でも有名です。昔望遠鏡分野でビクセンと激しく価格競争していたのを覚えています。後で調べるとこの「スカイメモシリーズ」は、現在では日本市場でも有名なスカイウォッチャー社からのOEM製品だそうです。

スカイメモSWとCanon EOS RP 24-105mmキットレンズ

MIZAR 双眼鏡
試行錯誤

発注したスカイメモSWと専用微動雲台、スカイメモ用三脚、スカイメモとEOP RPをつなぐシャッターケーブルが届いてからは、実験を行い、だいたい30秒程度なら焦点距離105mm(RPに付いていたキットレンズの望遠端)でも全く問題無く、また50秒程度でもトリミングして拡大しない限り星の流れは気にならないと分かりました。

その頃、時期としては12月なのでやはりオリオン座周辺の散光星雲が撮りたい。この一心で、近くの海岸沿いの芝生エリアなどに遠征したり、南向きの自宅ベランダで北極星が見えていない状態でドリフト法により時間をかけて極軸合わせをして撮影しました。

1コマ50秒をたくさん連続撮影し、sequatorというフリーソフトを使ってPC上で合成します。合成後の写真は、以前から色々使っているPaintShopProで画像編集します。こうして苦労を重ねた末、出来上がった2枚の写真が下記です。

1枚目は12/29に撮影した、オリオンザ三ツ星周辺の散光星雲です。三ツ星のいちばん左の星アルニタクの左上が燃木星雲(NGC2024)、その下にうっすらと馬頭星雲(IC434,B33)、さらに下方に暗黒星雲であるランニングマン星雲がなんとなく見え、一番下がオリオン大星雲(M43,M42)です。

2022/12/30撮影 無改造カメラと暗いカメラレンズによる三ツ星周辺の散光星

<1枚目諸元>

  • 機材:
    無改造EOS RP ,
    RF24-105 IS STM(望遠端105mm,f7.1) ,
    Filter MarumiStarScape  , スカイメモSW
  • 撮影地:神奈川県相模原市
  • 撮影日:2022/12/30
  • 撮影条件:ISO800 , 50sec X 50コマ(総露光時間41分40秒), ディザリング
  • 編集:
    sequqtorによる明るさ調整・加算平均合成   ,
    PaintShopPro7.04によるトリミング等

 

2枚目は、1枚目に先立って撮影したオリオン座と冬の天の川の一部です。

2022/12/24撮影 無改造カメラと暗いカメラレンズによるオリオン座と周辺天の川

<2枚目諸元>

  • 機材:
    無改造EOS RP , RF24-105 IS STM(広角端24mm,f4),
    スカイメモSW
  • 撮影地:神奈川県茅ヶ崎市(自宅ベランダ)
  • 撮影日:2022/12/24
  • 撮影条件:
    ISO800 , 50sec X 24コマ(総露光時間20分), ディザリング
  • 編集:
    sequqtorによる明るさ調整・加算平均合成 ,
    PaintShopPro7.04によるトリミング等  ,
    PixInsightによる再トリミング・ムラ補正・緑ノイズ除去
    (PixInsightによる処理は後日実施)
天体改造

上記2枚の写真を仕上げた時点で、赤い散光星雲をもっときれいに映すためには、やはりカメラを天体改造するしかないと判断しました。それまでは、なんとなくもっと明るいレンズにすれば、改造はしなくてもまだまだ良く撮れるかも。。と思っていました。その理由の一つが、いっしょに天体写真を始めた友人夫婦のカメラレンズは私のレンズより明るく、私の写真より星の数や鮮やかさなどが優っていたのです。

しかしまず1枚目の写真の諸元を見てください。総露光時間41分40秒です!昔サクラカラー400というISO400相当のカラーフィルムと200mmの望遠レンズを使ってM42はもっと強烈なピンク色に撮れました。

そして2枚目。サクラカラー400で50mm標準レンズで20分も撮影すれば、オリオン座周辺はもっと赤く撮れました。

しかもこの2枚は、いずれもカメラ設定値ISO感度800です。それでもこの程度。

特に2枚目の写真を昔の感覚で見ると、やはり星の移り具合に比較して赤いhII領域の写り具合が極端に低いと思います。

銀塩フィルム時代に撮影していた実家周辺(東京に近い埼玉県南部)は、今私が住んでいる神奈川県茅ヶ崎市よりも光害は少なく、単純に比較できないかもしれませんが、この不自然さはやはり人工的な意図(フィルターによる減衰)を感じずにはいられません。

そこで天体改造に出す事にしました。とにかく急いでいました。早くしないと冬の星座であるオリオン座周辺が撮影できなくなってしまうからです。

 

今回はここまでにします。次回は改造したEOS RPとBLANCA-70EDTによる直焦点撮影で、ようやく赤い散光星雲をそれなりに撮れた記憶を記事にします。