楽しい記憶

天体写真や花鳥風月の写真など

PoleMasterを使ってみました

2023/7/17(月)は天候が良かったので、近くの農道に出撃して、AM5赤道儀と同時に購入したQHYCCD社の極軸用カメラ「PoleMaster」を初めて使ってみました。7/6の三裂星雲(M20)の撮影からAM5赤道儀を使い始めたのですが、今までは全て庭先での撮影でした。庭先は北極星が見えないので、PHD2のドリフトアライメント(DA)で極軸を合わせます。北天の撮影を行うには近くの農道に出かけるのですが、この場合北極星を使った極軸合わせを行います。

スカイメモSWでは、私の使っている光学系で1コマ数分の撮影を問題無く(星が流れずに)行うためには、極軸望遠鏡で極軸を合わせた後、さらにDAで厳密に合わせる必要が有りました。AM5でPoleMasterを使った極軸合わせだけで済むのなら時間の節約になります。

結果は良好でした。M20を撮影した時の下記記事の下の方で紹介した通り、

webkoza.hatenablog.com

DAを行うとPHD2のガイドグラフの振れ幅は、約±2秒以内でした。それに対しPoleMasterだけで極軸を合わせた場合、約±4秒以内でした。この精度は、撤収直前まで2時間以上問題無く維持できました。これは私の撮影環境では十分な精度と言えます。マニュアルを読みながらの調整だったので、30分ぐらいかかりましたが、慣れれば15分もかからないと思います。DAで極軸を合わせるのに1時間ぐらいはかかるので、大変な時間の節約です。

AM5に取り付けたPoleMaster

PoleMasterは、「高感度CCDカメラに焦点距離25mmのCCTVレンズユニットを組み合わせた」(協栄産業大阪のホームページより)極軸カメラで、メーカーサイトによると、視野角が11°×8°あり、極軸カメラとして十分なものです。各メーカー赤道儀への取り付け金具が用意されており、AM5のファインダーシューへの取り付けのためには、「for UNC 1/4」という金具を別途購入する必要があります。

このカメラには眼視機能は無く、USB接続したPC画面を見ながら北極星を導入します。専用のソフトでPC上で、PolarAlignmentという手法で極軸を追い込んでいきます。PolarAlignmentは、AM5のワイヤレスユニットASIAIR-Plus専用のソフトでも採用されている最近では定番の極軸合わせ手法で、他社の赤道儀でも採用されているようです。

PoleMasterの場合、カメラに北極星を導入したら、周りの明るい星の位置からカメラの回転を含む位置を割り出し、次に赤道儀赤経方向に回転させてその星の位置のずれ量から北極の位置を計算し、北極星を再導入すべき位置を円で示してくれます。これを何回か繰り返し、最後に画面上の「極軸マークが回転軸マークに一致するように」赤道儀の高度と方位微調を行います。

ここからは、この時撮影した作品を2枚掲載します。今回はアノテーション付きです。まずは、アメリカ星雲(NGC7000)

アメリカ星雲(NGC7000)

<1枚目諸元>

●機材:
ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用0.8xレデューサーII ,
CBPフィルター , AM5赤道儀  , QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
●支援ソフトウェア:
 ステラリウムによる自動導入 , SharpCapによる撮影 ,PHD2による2軸オードガイド 
 , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
●撮影地:神奈川県茅ヶ崎市自宅近く農道
●撮影日:2023/7/17(月)
●撮影条件:Gain200 , センサー温度 -5℃ ,120sec x 29コマ(総露光時間58分)
●編集:
 PixInsightで加算平均合成後トリミング(フルサイズ換算焦点距離673mm相当)等

この星雲は、はくちょう座の1等星デネブの東南東に位置する大変大きな散光星雲です。今回はCBPフィルターを使いました。

この写真の上から下まで、180' 有る事が分かります。画面全体に星雲が広がっており、なんかのっぺりとした作品になってしまいました。0.8xレデューサーを入れてぎりぎり収まる対象だと分かっていたのですが、もっと倍率を落として右隣のペリカン星雲と同一写野に収めるのが定番のようですね。その方が濃淡のコントラストがきれいになります。今度撮影する時は、左右2パネル撮影して、モザイク合成したいです。

次は、アンドロメダ銀河(M31)です。この天体は初撮影では無いのですが、前回はEOS RPで、冬の終わりに月が有ってしかも西空低い公害だらけの空での撮影でした。当然酷いものでした。今回は、冷却CMOSカメラを使った初の撮影です。次の日の仕事の事を考慮して、2分X20コマだけ撮影しました。月は無かったのですが、北東低い状態からの撮影だったため、公害の影響をかなり受けており、ムラを取り切れませんでした。また、実は以前も経験した、大き目の円形汚れ(結露?)があり、それを消すのに苦労しました。

アンドロメダ銀河(M31)

<2枚目諸元>

●機材:
ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用0.8xレデューサーII ,
CBPフィルター , AM5赤道儀  , QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
●支援ソフトウェア:
 ステラリウムによる自動導入 , SharpCapによる撮影 ,PHD2による2軸オードガイド 
 , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
●撮影地:神奈川県茅ヶ崎市自宅近く農道
●撮影日:2023/7/17(月)
●撮影条件:Gain200 , センサー温度 -5℃ ,120sec x 17コマ(総露光時間34分)
●編集:
 PixInsightで加算平均合成後トリミング(フルサイズ換算焦点距離673mm相当)等

公害によるムラのせいか、円形汚れのせいかわかりませんが、PixInsightのIntegrationで3枚リジェクトされました。また、基本的に露光不足だと思います。露光を増やしてどこまでもっと細部構造に迫れるかまた試したいです。

今回の円形汚れは、DBEでは無理だったので、汚れ部分マスクを作り、カーブ補正で目立たなくしました。まず、ストレッチした画像をPaintShopで読み込んで、汚れ部分をマスクする白く塗りつぶした円だけのレイヤーを作り、元画像は削除してから新規で作った背景黒画像と合成した画像ファイルを、マスク用画像として作成。これをPixInsightのRangeSelectionで境界をぼかしてマスクとして仕上げました。マスクにより汚れ部分だけをカーブ補正することにより汚れを目立たなくしたのですが、大きかったため、マスク内の色も画一的では無いせいで、良く見ると分かってしまうレベルです。どうですか?2つの天体通してカメラの回転や取り外しをしていないので、当然上記2枚とも同じ位置に写り込んでいます。