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夏の散光星雲_三裂星雲 by AM5

前回の干潟星雲に続いて三裂星雲の紹介です。予告通り、今回からはZWO社AM5赤道儀での撮影になります。

まずは今回からの機材紹介を少々。下記がAM5赤道儀にBLANCA70-EDT+ASI294MCProを搭載したところです。

AM5赤道儀に乗せたBLANCA70-EDT+ASI294MCPro

まだ未使用ですが、赤道儀側面のファインダーシューにPole Masterという極軸カメラも装着しています。AM5は極軸望遠鏡が無いので不便かと思い購入しました。

AM5にした理由は色々ありますが、最近多くなったレビュー動画や記事を見る限り良い印象を持ったことが大きかったでしょうか。従来のウォームギア式と比べてこれだけの小型軽量にもかかわらず、バランスウェイト無しで10キロ程度の機材を搭載できる強度が有るのは、私にとって大変に魅力です。少なくとも私の現在の機材(総計5kg程度)ではバランスウェイトの必要性を感じません。

専用のカーボン三脚も購入しましたが、これも軽くて頑丈にできています。

製品の紹介をしてもしょうがないので、下記に現時点の私の機材接続図を示しておきます。はっきり言ってUSBケーブルだらけです。ASI Air Plus を購入すればUSBケーブルは減りますが、当面この構成でやってみるつもりです。

機材接続図

NotePC1で全ての機器を制御します。極軸を合わせて最初に自動導入した天体のプレートソルビングでアライメントを行った後は、車の中でNotePC2を使ってモニター&操作します。

庭先で撮影する時は、家のWiFi電波が届くので図のWiFiルーターは繋がなくても家のデスクトップPCで同じことができます。

機材紹介はこの辺にして、下記がAM5赤道儀で初めて撮影した三裂星雲M20です。左上の散開星団M21も入れて、前回の干潟星雲と同じ拡大率でトリミングしてみました。

ベランダ撮影の電線カブリに悩まされていたのですが、庭先の駐車場に置いた車の前のスペースに望遠鏡を設置すると、南天低い天体も電線カブリから解放されることが最近分かり、今後ここでの撮影が増えそうです。でも完ぺきでは無く、当然北極星は見えませんし、南西低くなるとやはり電線カブリが発生します。さらに、車のサーチライトで若干ガイドグラフが乱れることも分かっています。

三裂星雲 M20 と散開星団M21

<諸元>

●機材:
ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
CBPフィルター , AM5赤道儀  , QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
●支援ソフトウェア:
 ステラリウムによる自動導入 , SharpCapによる撮影 ,PHD2による2軸オードガイド 
 , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
●撮影地:神奈川県茅ヶ崎市自宅庭先
●撮影日:2023/7/6(木)
●撮影条件:Gain200 , センサー温度 -5℃ ,120sec x 39コマ(総露光時間78分)
●編集:
 PixInsightで加算平均合成後トリミング(フルサイズ換算焦点距離1368mm相当)等

暗黒帯によって、3つでは無く実は4つに分かれている様子や、北側の青い反射星雲も良く表現できたと思っています。まばらな散開星団M21もM20と同一写野に収めると良い雰囲気だと自己満足。ただ、22時頃出現した月齢17.9の月による光害の影響もあり、周囲の淡い赤い星雲を表現するには露光時間が足りませんでした。

設置と接続を終えると、南天の星と東の低い星を使って、PHD2上でドリフトアライメント(DA)を行いました。AM5赤道儀にはハーフピラー側に3つのクランプが付いており、全てを緩めるとハーフピラーの上で赤道儀を自由回転できます。また左右から挟みこむ水平微調ノブで水平回転の微調ができます。赤道儀両側面に付いているクランプを締めると、水平微調自体が出来なくなり完全に固定されます。緯度方向の調整は赤道儀左右の緯度クランプを両方緩く締めた状態で緯度調整用ノブを回して調整します。いずれの微調も大変滑らかでやり易かったです。

DA完了後は、そのままステラリウム上で、M20とM21の中間あたりを画面中央にして、「Alt+1」(#1として赤道儀をステラリウムに登録しておく)を押すと赤道儀による自動導入動作が始まります。結構感動的でした。マウスクリックで選んだ天体を導入するには「Ctrl+1」です。

前提としては、ASCOMドライバーとASI Mount ASCOM Serverをインストールして設定しておくこと。ステラリウム、SharpCap、PHD2全て、赤道儀に「ASI Mount」を指定しておくこと。それと、ASPS(All Sky Plate Solver)のインストールと、SharpCapでのプレートソルビング設定です。

自動導入が完了すると望遠鏡が指定した方向を向いているのですが、若干のズレが有ります。このずれは、主に望遠鏡の固定位置と赤道儀が認識している方向が並行で無いために起きます。このズレを吸収する操作をアライメントと言いますが、SharpCapのメニューで「プレートソルブ後再同期」を選択すると、プレートソルビング後上記ズレを補正して厳密にステラリウムと同じ画面になるように望遠鏡を自動で動かしてくれます。これもまた感動的です。

下図は、こうして簡単に導入できたM20,M21を撮影中のSharpCap画面とPHD2の画面です。

M20撮影中のSharpCapとPHD2画面

 

見にくいのですが、左にはSharpCapの2分毎の撮って出し画像、右上にはPHD2のガイドグラフを表示しています。ガイドグラフに注目してください。これは横方向にリアルタイムに流れていくガイドズレを縦軸方向にプロットしたグラフです。赤が赤緯軸方向、青が赤経軸方向のリアルタイムズレ量を表しています。両方ともにほとんど、±2秒に入っています。若干赤のグラフが1か所だけわずかに-2秒以下となった場所がありますが、この時は車のサーチライトが原因でした。撮影80分間ノータッチでこのグラフ状況が継続しました。3回目ですが、これもまた感動的でした。撮影中はクーラーを聞かせた部屋の中で、PC画面をキャストした大型テレビ画面を見ながらゆっくりする事ができたわけです。

このように今までよりも楽に撮影ができたのですが、やはりトラブルも有りました。本当は40コマ撮影するつもりが、このトラブルにより39コマしか採用できませんでした。その理由は最後の40コマ目の撮って出し写真が下図の様になってしまったからです。これはfits viewerでストレッチ表示したものです。

40コマ目の撮って出し画像

御想像の通り、オートガイドが全く効いていない状態です。調べてみると、ASI Mount ASCOM Serverアプリ画面で、「Tracking」のチェックがはずれており、外部ソフトウェアからの赤道儀制御ができない状態になっていました。手動で再度チェックしようとしても、拒絶されてチェックできません。復旧するには、赤道儀の電源OFF/ONとPCの再起動が必要でした。

はっきりした原因はわかりませんが、PC再起動前の状態として、当然撮影は停止しましたが、SDカードへの撮影画像ファイルの保存が渋滞しており、まだ20枚以上が保存されていない状態でした。最後の40枚目の保存完了を待ってから再起動しました。つまりSDカードアクセスがボトルネックとなり、保存できない画像ファイルがバッファに溜まりまくりメモリを圧迫していたわけです。

おそらくこれにより、オートガイド動作が異常となり、PHD2やSharpCapと通信しているASI Mount ASCOM Serverが誤動作している状態になったのだと思っています。ASI Mount ASCOM Server画面による手動操作により赤道儀を動かすことはできたので、赤道儀ファームウェアのストールではないと思います。

今後の対策として、SharpCap側の設定で遅いストレージ用設定とか有れば良いのですが、ぱっと見無さそうなので、20コマぐらいで一旦中断して全画像ファイルの保存を待つことしかないかなと思っています。PC自体のストレージ容量に余裕が無いので。