楽しい記憶

天体写真や花鳥風月の写真など

南天低い Silver Coin

台風の影響がようやく無くなった昨日の夜、久しぶりに庭先で天体撮影をしました。今回はこの時初めて撮影したNGC253の紹介と、EOS RPによる周辺収差の定性的な実験結果(成果無し)をログにします。

NGC253は、Silver Coinと呼ばれ、和名では「銀貨銀河」。なんか言いにくいので、ここではSilver Coinと呼ぶことにしますがどちらもマイナーな呼び名だと思います。一般的には「Sculptor Galaxy 、ちょうこくしつ座銀河」と呼ばれるようです。

Silver Coin 銀河は視等級8.0と大変明るくしかも大きな銀河です。アンドロメダ銀河、さんかく座の回転花火銀河の次に観測しやすい銀河と言われています。そしてこの銀河はスターバースト銀河で、爆発的な星形成が行われているのだそうです。スターバースト銀河は大変カラフルなので、明るいSilver Coin銀河は天文写真家では人気の対象だと思います。

惑星眼視観望

Silver Coin 銀河は秋の天体なのでこの日の正中時刻は01時12分。自宅の庭は南東方向に向いているので、そろそろ南天の秋の天体が撮影しやすくなってきています。それでも高度が上がってくる最適な撮影開始予定時刻は22:45。それまでの間は望遠鏡による眼視観望を行いました。

最初の眼視対象は、ほぼ真正面にある土星。初めての惑星眼視観望です。アイピースはGS FMC PLOSSL 6mm。焦点距離420mmの望遠鏡なので単純倍率70倍です。小さい像ですが正直これほどシャープに見えるとは思いませんでした。結構感動でした。もっと早く眼視観望すれば良かった。。昔のF15屈折望遠鏡で見た土星のぼやけた像の記憶(曖昧。。)に反して、傾いている環がくっきりと分かりました。環の筋までは見えませんでした。

次に東にようやく上がってきた木星。これも大変シャープな像でした。縞模様がはっきりと確認できました。大赤斑までは確認できませんでしたが、ステラリウムと比較しながら、衛星のイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの同定が出来ました。

最後にアンドロメダ銀河の眼視観望を楽しんだ後、天頂プリズムをカメラに換装し、撮影開始しました。

Silver Coin 銀河

下記が、仕上げたSilver Coin 銀河の写真とアノテーションです。

Silver Coin(NGC253)

<諸元>

  • 機材:
    ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
    IRCutフィルター,CBPフィルター , AM5赤道儀  ,
    QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
  • 支援ソフトウェア:
    ステラリウムによる自動導入 ,
    SharpCapによる撮影 ,PHD2による2軸オードガイド 
     , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
  • 撮影地:神奈川県茅ヶ崎市自宅庭先
  • 撮影日時:2023/9/9(土)22:44 ~ 2023/9/10(日)01:02
  • 撮影条件:
    Gain200 , センサー温度 -5℃ 
    120sec x 70コマ(総露光時間140分)
  • 編集:
     PixInsightで加算平均合成後トリミング
    (フルサイズ換算焦点距離3340mm相当)等

BXTパラメータはデフォルト値です。結構内部構造が浮かびあがったと思っています。南中高度は27°ぐらいと低いので、露光は2分×70枚(2時間20分間)とかなり頑張りました。おかげで、まあまあのS/Nです。やはり大きいです。縦方向の1目盛り15'なので、Silver Coin 銀河の長手方向は25'ぐらいあります。M101が28’ぐらいなので若干小さい感じですね。M101にくらべて大変カラフルなのがわかります。

今回の失敗は、結露。ABEで光害カブリを除去してみると、光害に隠れていた大き目の丸いシミが2か所出現。この時点で心が折れそうになるのを何とか踏みとどまり改善を決意。1か所は端だったのでトリミングで取り除きましたが、もう1つは除けず、以前確立したマスクワークで時間をかけて除去しました。原因を突き止めなくては。。

周辺収差最適化実験

前回の記事で、北アメリカ星雲の写真で酷い周辺収差により写野の端に入れたデネブをトリミングで諦めざるを得なかった事を記載したのですが、HIROPONさんからバックフォーカスの調整をやってみると向上するかもしれないとアドバイスいただきました。それまでは、収差補正されているレデューサーやフラットナーレンズを使って、合焦してさえいれば良いぐらいの感覚でいたのですが、これは間違いのようです。

KASAIの望遠鏡、フラットナーレンズ、0.8xレデューサーを使用しているのですが、フラットナーレンズ、0.8xレデューサーの取り付け推奨値は下記です(明記されたスペック表は有りませんがサイトの紹介記事やEメールでのやり取りから推測)。

  • ED屈折用フラットナーレンズII(FLL)の場合 A
    KASAI屈折望遠鏡2インチ口ーFLL-48mmTリング(5mm)-EOS RP
  • ED屈折用0.8xレデューサーII(RED)の場合 B
    KSAI屈折望遠鏡2インチ口ーRED-2インチバレル延長筒(3cm)-
    M48 Tリング(5mm)-EOS RP

これに対し前回北アメリカ星雲を撮影した時の構成(C)は下記

  • KSAI屈折望遠鏡2インチ口ーRED-2インチバレル延長筒(3cm)-
    M48 Tリング(5mm)EF→RFマウント変換アダプター(23mm)-EOS RP

前回撮影のCはBより23mmのマウント変換アダプター分長いわけです。下図は、右が上記C(8/24撮影)、左はCの延長筒3cm無しの写真(8/29撮影)です。いずれも2分間の撮って出しで、2枚とも北アメリカ星雲とペリカン星雲全体をEOS RPで写野に入れた右上部分です。星像の変化に明らかに違いが有るものの、この比較だけではどちらが良いとはいえません(どちらも良くない)。8/24のピント調整では写野のどのあたりにデネブを入れて調整したか覚えていませんので、ピント位置の違いが出ているのかもしれません。8/29は確実にデネブを中心に据えてピント調整しています。

右:3cm延長筒有 左:3cm延長筒無

KASAIのM48延長筒セット(5mm,10mm,20mm)とM48マイクロアジャスターを購入したので、次回は3cm延長筒無しで、これらどの延長筒が最適か実験したいと思います。でもこの「収差最適化実験」やたら時間がかかるため、撮影の合間に少しづつ行います。実験のためだけに時間を費やすのが耐えられないので。今後成果が出たらブログ上でログにしていきます。