茅ヶ崎市の夜は少しずつ涼しくなってきています。夜機材をいじっていても蚊に襲われることも少なくなってきました。そして夜空は少しずつ秋の星座に入れ替わってきています。
さんかく座という星座はマイナーなので、天体に興味の無い人にはあまり知られていないのではないでしょうか。この星座は有名なアンドロメダ座の南西、おひつじ座の北東つまりアンドロメダ座とおひつじ座に挟まれた小さな秋の星座です。この小さな星座、逆三角形の右下のところに大きな渦巻き銀河が有ります。それがM33です。ほぼ真上から見たフェイスオン銀河で、「さんかく座の回転花火銀河」とも呼ばれ、天文家の間では大変有名です。
この天体、昨シーズンは時期が間に合わず撮影できませんでした。何しろ天体望遠鏡を購入したのが今年の1月なので。今回はまず9/10(日)に庭先で狙いました。この時のメインターゲットはNGC253だったのですが、メインターゲット撮影後、日が変わった9/10 1時過ぎから撮影開始。
撮影中部屋の中でくつろいでいると、PC画面が急にスクリーンセーバーに!あれ?もしやと思い画面を開くと、リモートデスクトップクライアントが落ちていました。急いで庭に出ると、思った通りノートPCの電池切れ。これ以前もやらかしてます。。学習してないなあ。。ACアダプタケーブルをポータブル電源に接続してノートPCの電源をONしてから、PHD2を立ち上げキャリブレーションを行って、さらにSharpCapを立ち上げてCMOSセンサーの温度を下げて。。ようやく再開して、最初の1枚の撮って出し写真を確認して愕然としました。見事な電線がななめに銀河を覆っていました。天頂に近づくとこのしつこい電線の餌食になるのです。これで心が折れてこの日M33はあきらめました。この時点で11枚撮影できていました。
傷心の中、東天に目を向けると、立派なオリオン座が上がってきていました。この日は日曜日なので、もう少し撮影することにし、燃木星雲から馬頭星雲を写野に入れて1時間ほど撮影しました。この記録はまた別の機会に。
そして、昨日9/12(火)の夜は条件が良さそうだったので、リベンジとして、さんかく座の回転花火銀河を撮影するために近くの農道に久しぶりにプチ遠征しました。ここなら電線カブリは心配ありません。結局62枚撮影しました。
2夜にわたる撮影で仕上げた写真が下記です。
<諸元>
- 機材:
ASI294MCPro ,
EOS RP, BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
IRCutフィルター,CBPフィルター , AM5赤道儀 ,
QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡 - 支援ソフトウェア:
ステラリウムによる自動導入 ,
SharpCapによる撮影 ,PHD2による2軸オードガイド
, ASI Mount Serverによる赤道儀連携 - 撮影地:
①神奈川県茅ヶ崎市自宅庭先
②神奈川県茅ヶ崎市自宅近く農道 - 撮影日時:
①2023/9/10(日)01:13 ~ 2023/9/10(日)01:33
②2023/9/12(火)21:49 ~ 2023/9/12(火)23:56 - 撮影条件:
Gain200 , センサー温度 -5℃
120sec x 73コマ(総露光時間146分) - 編集:
PixInsightで加算平均合成後トリミング
(フルサイズ換算焦点距離2620mm相当)等
リニア処理で、ムラ補正、色合わせ、BXTもうまくいき、ノンリニア処理で彩度を上げると内部の色合いが浮かび上がってきました。ノンリニア処理では、他にHDRMT処理によって中心付近の細部構造をうまく強調できました。しかし淡い腕の部分が荒くなってしまいました。もっとなめらかにするにはS/Nが足りていないようです。
視等級はステラリウムによれば5.7等と明るいはずなのですが、明るい恒星以外の銀河構造は大変淡いようです。それでもこのぐらい露光をすれば本来もっとS/Nを上げられると思うのですが、今回もやはり結露発生。撮影後対物レンズを確認するとうっすらと結露していました。結露が無ければもっとS/Nは上がったはずです。結露の無い丸い円状部分が画像編集によりほんの少し暗く浮かび上がったりします。今回も2個の丸いシミが有り、1個はトリミングでもう1個はマスクワークで綺麗に取り除きました。
なぜ結露するのかが問題です。市販のヒーターの電源ランプは付いているのにヒーター部分を触ると冷たい。。最初は暖かかったのに。ヒーター用モバイルバッテリーの減りも少ないので、たぶんルーズコンタクトによる断線だろうと思い、本日調査。まずジャックの差し込みコネクタの+、ー間の抵抗(≒ニクロム線の抵抗)を測ってみると、約7-8オームでした。バッテリーをつなぐと暖かくなるのですが、足りない気がします。。抵抗はもっと大きくても良いかも。
計っていると、抵抗値がどうも不安定になります。あきらかにルーズコンタクトの症状なので、思い切ってニクロム線が入っている布部分を切って露出すると案の定ケーブルとニクロム線の接合部分が断線していました。これを半田付けし直して、布は縫って補修しました。その後のテストも良好でしたので、これで次回試してみてそれでも結露するようなら、もっと長いニクロム線を買ってきて自作するしかないかなあ。。
下記はアノテーション付き画像です。
長手方向は40' 以上の大きさに見えます。ステラリウムによると1°08'42"と書いてあります。M101が28'ぐらいの大きさなので、1.5倍は大きいことになります。この銀河、天の川銀河、アンドロメダ銀河 (M31) とともに、局所銀河群を構成しているのだそうです。いわばお仲間ですね。約24km/sで近づいているとはいえ、距離はまだ約300万光年あります。
左上に輝く赤い天体は、NGC604で、M33内にある巨大なHII領域です。この他にNGC595も複雑な形をしたHII領域であることが写真からはっきりとわかります。系外銀河のHII領域が銀河全体写真でこれほど良く認識できるのは銀河が大きいからですね。