宇宙には不思議な形状をした天体が有るものです。この天体もその中の一つですね。その名はシャボン玉星雲。一般的にはバブル星雲と呼ばれ、NGC7635という番号が付けられています。
下の写真は、M52というカシオペア座最大の散開星団と同一写野に入れた定番の構図です。右下がシャボン玉星雲(NGC7635)です。
<諸元>
- 機材:
ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
IRCutフィルター,QBPフィルター , AM5赤道儀 ,
QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡 - 支援ソフトウェア:
ステラリウムによる自動導入 ,
SharpCapによる撮影 ,PHD2による2軸オードガイド
, ASI Mount Serverによる赤道儀連携 - 撮影地:
神奈川県茅ヶ崎市自宅庭先 - 撮影日時:
2023/10/13(金)19:41 ~ 22:53 - 撮影条件:
Gain200 , センサー温度 -5℃
120sec x 70コマ(総露光時間140分)
月出無し - 編集:
PixInsightで加算平均合成後トリミング
(フルサイズ換算焦点距離1820mm相当)等
QBPの効果とBXTによる鮮鋭化の効果で、シャボン玉の周りのHII領域の細部構造もまあまあ表現できました。
この写真、赤いHII領域に、シャボン玉の絵を書き込んだように見えますが、実際に存在している天体です。今回は最初から途中で子午線越えを覚悟して臨みました。ステラリウムで対象天体の正中時刻を調べてその10分ほど前に、一旦赤道儀をホームポジションに戻し、同じ位置に自動導入すると、望遠鏡が赤緯反転されて導入されます。
でもうっかり部屋の中でくつろぎ過ぎてしまい、気づくと2-3枚ガイド無効状態で撮影されていました。この状態からでも上記手順で再導入すれば問題ありません。途中薄雲が時々出て来ましたがガイドエラーが継続する事態には至らず、ノータッチ撮影を最後まで継続できました。
子午線越えで手間取り時間がかかってしまい(実際はステラリウムが落ちたりする事も大きい)、結局19:41 ~ 22:53まで撮影しました。今回も75コマ確保したかったのですが、選別してみると途中、意外と薄雲の影響があり、結局採用できたのは70/87コマでした。
シェル構造
このシャボン玉、直径が10光年、距離は11,000光年という途方もないものです。興味深いので、少し調べてみました。
シャボン玉の中心から北に位置する青色超巨星のO型星であるBD + 60°2522の強烈な恒星風によって形成された星雲で、恒星風で吹き飛ばされた恒星のガスが、周囲の星間ガスを圧縮して気泡状の外縁(シェル)を作ったのだそうです。拡大反転して編集してみると意外に良くわかります。
シェルは2重構造になっています。内側のシェルが明るく濃いシェルです。NGC7635の周りには、HII領域が広がっています。シェル自体は紫外線によって電離されたガスが光っている輝線星雲です。「ノット」(塊)と記載した構造は、他のHII領域でもよく見られる、物質が凝縮された柱状の天体です。
わかりずらいのですが、中心星の西側に、内側のシェル内にあるように見える右上に開いたV字状のノット(彗星状ノット)がありますが、これはシェルの内部では無くて外側にへばりついているような状態だそうです。
NGC7538
下の写真は、NGC7538も入れた構図です。この星雲はステラリウムでは「北の干潟星雲」と書いてあります。小さいですが、いて座の干潟星雲M8に少し似ています。
<諸元>
- トリミング以外は最初の写真と同じ
- 編集:
PixInsightで加算平均合成後トリミング
(フルサイズ換算焦点距離1090mm相当)等
NGC7538はケフェウス座に位置し、距離は9100光年。内部に暗黒帯を含むHII領域です。この領域には星が生まれる元となる巨大な分子雲が存在し、 現在でも活発に大質量星(O型、B型星)が生まれている領域だそうです。
アノテーション
上記写真にアノテーションを入れた写真が下記です。
NGC7635の内側シェルの見かけの大きさは3' 程度、NGC7538の見かけの大きさは、8'ほどであることがわかります。
最後に
今回のような特徴的な天体では無くても、初めて撮影した天体がPC上でスタックして画面に浮かび上がった時の感動は、何ものにも代えがたいです。中学生~高校生の頃、となりの家の同級生の家にある現像セットで、コダック社の103aというモノクロフィルムで撮った天体が暗室の中で浮かび上がる感動を思い出すのです。