楽しい記憶

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ふたご座の超新星爆発残骸

モンキーヘッド星雲の撮影でデュアルナローバンドフィルターの練習が終わり、重要な教訓も得て、いよいよ本番。このフィルターで次に撮りたかったのは、クラゲ星雲(IC443)です。この星雲は、モンキーヘッド星雲に近く、その北北東約2°のところに位置しています。古い超新星残骸であると考えられており、網状星雲に似た複雑な構造も存在します。ただこの星雲、大変淡く写りにくいようなので、デュアルナローバンドでの撮影対象にピッタリです。

下記が仕上げた写真です。

クラゲ星雲(IC443)

<諸元>

  • 機材:
    ASI294MCPro, BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用FLLII ,
    IRCutフィルター(共通),
    L-eXtremeフィルター(ナローバンド撮影用),
    CBPフィルター(ブロードバンド撮影用),
    AM5赤道儀  , QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
  • 支援ソフトウェア:
    ステラリウムによる自動導入  ,SharpCapによる撮影とPlateSolving
     ,PHD2による2軸オートガイド 
    , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
  • 撮影地:
    神奈川県茅ヶ崎市自宅近く農道
  • 撮影日時:
    2023/12/07(木)19:33 ~ 2023/12/08(金)00:14
  • 撮影条件:
    Gain200 , センサー温度 -20℃ 
    ナローバンド撮影  120sec x 95コマ(総露光時間190分)
    ブロードバンド撮影  120sec x 21コマ(総露光時間42分)
  • 編集:
     ナローバンド画像とブロードバンド画像を各々PixInsightで加算平均合成後、前者から星雲画像、後者から星画像を取り出しそれぞれ編集してから合成後トリミング(フルサイズ換算焦点距離1090mm相当)

2匹のクラゲがお互い足を向き合って泳いでいるのもわかり、細部構造もそれなりに表現できました。また北東方向に伸びる淡いHII領域も写っています。初めての撮影対象にしては良くできたと自己満足しています。

最初にナローバンド撮影を開始したのですが、高度が低かった最初の5枚は除外。さらに2枚を途中のガイドエラーにより除外。それでも歩留まり率は93.1%(95/102)なので良い方です。

今回は初めてセンサー温度-20℃まで下げて撮影。事前にFLATとDARKは撮影しておきました。低温にしたことによりノイズが少なかったのかどうかははっきりしませんが、背景と天体を分離するマスクの生成が楽だったことは確かです。

そして流石はデュアルナロー。光害ムラの除去がほんと楽でした。CBP写真の方は結構試行錯誤が必要でしたが。

ブロードバンド画像から星だけを採用するのがなんかもったいなかったので、RGB分解してB成分だけナローバンド画像のB成分に、L画像がノイズに埋もれない程度にブレンドしてみました。

下記は2分1コマ撮って出し画像です。fits viewerで表示したものです。左がナローバンド画像、右がブロードバンド画像です。ほんと淡いです。左上のクラゲの一部がやっと見えています。

撮って出し:ナローバンド画像とブロードバンド画像

そしてスタック直後色々こねくり回す前のナローバンド画像(左)とブロードバンド画像(右)が下記です。ブロードバンド画像はナローバンド画像に位置合わせ(StarAlignment)してあります。露光時間が大きく違いますが、ナローバンド画像には北東方向の淡い星雲も写っているのがわかります。

スタック直後:ナローバンド画像とブロードバンド画像

下記はアノテーション付き画像です。2匹のクラゲの端から端まで1°近くあることがわかります。星雲の西で輝く赤い星は、ふたご座の3等星テジャト・プリオルです。

クラゲ星雲の位置は下図です。モンキーヘッド星雲のすぐ近くです。

クラゲ星雲の位置(ステラリウムより)