とても暖かい土日となりました。暖かいと天体写真を撮影する意欲が湧いてくるのですが、今撮れる天体は皆小さい。。それでも小口径にて子持ち銀河M51の撮影に挑戦してみました。この銀河は、直径でM101の1/3程度です。でも視等級は8.1等と、比較的明るいので人気の天体です。
りょうけん座に位置していますが、おおぐま座(北斗7星)のミザールからアルカイドの線を中心とすれば、M101とはだいたい線対称の位置にあります。
例によって赤道儀の性能を生かして2日間にわたる長時間露光です。日々月の勢力が増してくる時期なので、初日3/14(金)にCBPによるブロードバンド撮影、2日目3/15(土)は光害カット効果の高いL-extremeフィルターによるナローバンド撮影です。
初めての子持ち銀河(M51)写真
仕上げた写真が下記です。
<諸元>
- 機材:
ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII
(D=70mm,f=420mm), IRCutフィルター,
CBPフィルター(ブロードバンド撮影),
L-eXtremeフィルター (ナローバンド撮影),
AM5赤道儀 ,QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡 - 支援ソフトウェア:
ステラリウムによる自動導入 ,
SharpCapによるプレートソルビング ,APTによるディザリング撮影 ,
PHD2による2軸オードガイド , ASI Mount Serverによる赤道儀連携 - 撮影地:
神奈川県茅ヶ崎市自宅近く農道(1) , 神奈川県茅ヶ崎市自宅庭先(2) - 撮影日時:
(1)ブロードバンド撮影:2024/03/14(金)08:01 ~ 2024/03/15(土) 00:51
(2)ナローバンド撮影:2024/03/15(土)21:22 ~ 2024/03/16 (日)03:19 - 撮影条件:
Gain200 , センサー温度 -20℃
(1)240sec x 53コマ(露光時間212分)
(2)240sec x 48コマ(露光時間192分)
総露光時間:404分 - 編集(*1):
PixInsightで(1)(2)各々加算平均合成後GraXpertまたはABEでムラ補正し、ブロードバンド画像の星無し画像にナローバンド画像の星無し画像から取り出したHa画像をブレンド。BXT・彩度増加・Histgram調整・Curv調整・デノイズなどの編集後、ブロードバンド画像から取り出した星画像と合成。
トリミング(フルサイズ換算焦点距離1640mm相当)
親銀河の腕の構造、HII領域のつぶつぶ、親子間の茶色い領域も表現できました。私の光学系で長手の大きさ11' 程度の銀河がこのぐらいになれば、自分では満足レベルです。
M51の構成としては、親銀河はNGC 5194、すぐ近くの伴銀河はNGC 5195というNGC番号です。地球からはおよそ3700万光年の距離にあります。M51銀河群は、5°ほど南のM63およびNGC 5023、NGC 5229などを含んでいるそうです。
初日近くの農道に近征した理由は、早い時間帯から撮影開始したかったからです。自宅庭先だと電線通過待ちが発生するため21:30頃からしか開始できないと予測していたので。ところが、BLINKで目視チェックすると、21時前ぐらいまでのコマ画像は、東の空の光害まみれで酷い状態でした。結局21時ごろからの写真しか採用できませんでした。ここの東の空は、インターチェンジの明かりと鉄塔の明かりが酷いということを思い知らされました。
2日目の庭先ナローバンド撮影は、ある程度予想通り、電線通過待ちが発生しました。ところが、この通過待ち、2回発生。南側に斜めに走る細い電線には被らないと思っていたのですが、途中から被ってきました。これによりコマ数を稼げず、子午線反転後もかなり撮影せざるを得ませんでした。
編集(PixInsight)ーWBPPエラー
電線通過待ちにより2日目の撮影も苦労しましたが、編集も苦労しました。ブロードバンド画像の方のスタックと色合わせは問題有りませんでしたが、ナローバンド画像のスタックがどうしてもWBPPでうまくいかず、星位置合わせ~ImageIntegrationまで手動で行う羽目になりました。初めてのことで調査のために時間を要しました。
「weightの設定値0.005によって(48枚中)47枚除外した。最低3枚はintegrationに必要」というエラーです。この値を小さくしてみてWBPPリトライしても全く直らず。ちなみにWBPPには、キャッシュ機能が有って、設定変更や画像の増減を行ってから、同じフォルダ指定で実行し直せは、可能なデータは全てキャッシュから拾うので大幅に処理時間が軽減されます。ただ、やり直すときは必ずWBPPを起動しなおさないといけません。これをやらないとエラーのオンパレードになったりします。
例によってフォーラムの記事をあたっていると、同様の人がいました。この人の場合、PixInsightの中の人の回答で、「ImageIntegrationのMinimum weightを0にすればこの検査が無効になるので、エラーは出ないよ」と書かれていたので、私もまず、0では無く小さくしながらやり直してみましたが、全く直りませんでした。そこで仕方なく0にしたところ、エラーは出なくなり、最後のDrizzleIntegrationまで完了しました。
ところが、ImageIntegration画像とDrizze1x画像を見てみるとお話しになりません。(下図)
ImageIntegration画像は格子状のモアレが盛大に出現。1xDrizzleIntegration画像はノイズやフラット補正前の構造が増幅されている感じです。
フォルダ内画像を確認してみると、calibrationでdebayerされた画像は問題無いのに、registered画像ではモアレが出現していましたので、StarAlignmentで生じたアーティファクトだとわかりました。このモアレはDrizzleIntegrationでは起きないと分かっていたのですが、上記右の画像では使いものになりません。
さらに調べていくと、「StarAlignmentのInterpolation-Pixcel Interpolationで、Cubic B- Sprine Filterを選択すれば、Pixcel補間の質は落ちるがモアレが軽減される」という情報が有ったので、これをやるために、手動でStarAlignmentー>LocalNormalizationー>ImageIntegrationをやり直してみました。
ところがそれでも、Minimum weight=0.005(デフォルト)だと、上記と全く同じエラーが出て停止しました。0にしてみるとエラーは出なくなり、Integration画像から無事モアレが消えました。見た目の品質も問題無さそうなので、この画像を使って編集を進めました。
今思えばWBPPでのエラー解消のため、ImageIntegrationのMinimum weightを小さくするのでは無く、ひょっとしたら逆にデフォルトの0.005より大きくしていけば直る可能性があったのかもしれません。次回同じことに直面したら試してみよう。
ちなみに、手動でImageIntegrationプロセスを実行する場合、Minimum weightはメニューに無いので、「Edit Instance Source Code」画面を開いて「P.minWeight」を変更します。(下図)
今後ナローバンド撮影ではコマ当たりの露出時間を増やす必要が有りそうです。StarAlignmentで少量回転したことによるノイズと画素配列との干渉は、相対的にノイズを減らせば軽減できるようだからです。
編集(PixInsight)ーCombineHaWithRGB Script
もう一つ。銀河の腕に存在するHII領域(赤いつぶつぶ)を強調する目的で、Ha画像をブレンドするのであれば、いつも使っているNBRGBCombination Script以外にも「CombineHaWithRGB Script」が使えそうなので、試してみました。
下記を参考にしましたが、この記事ではリニア段階で行うと書いてあるので、BXTの前に各々の画像で実施しました。大変手軽で使いやすいと思ったので今後の私の標準にします。
パラメータ変更が即プレビューウィンドウに反映されるのはNBRGBCombination Scriptと同じですが、プレビューウィンドウの拡大ボタンが何段階か押せるので拡大した状態で確認しながら設定変更できるのが便利でした。
効果はNBRGBCombination Scriptと大差無い気がしました(あくまで私見)。
それと、「Remove H-Alpha BackGroud Noize」というメニューが有り、上の方にあるMaskにマスク画像を設定しておけばマスクをかけてHa画像の背景ノイズを低減できますので、今回これを使いました。
画面上に「Linear Image」のチェックが有るので、これをはずせばノンリニア画像にも適用できそうですので、各々BXT後の画像でブレンドした方が、より効果が上がるかもしれません。次回試してみます。
銀河の位置
最後にアノテーション画像と銀河の場所を示す星座絵です。
*1:編集方法はあまりに流動的且つ実験的なので今回からは概要だけ掲載します