楽しい記憶

天体写真や花鳥風月の写真など

子持ち銀河M51と編集

とても暖かい土日となりました。暖かいと天体写真を撮影する意欲が湧いてくるのですが、今撮れる天体は皆小さい。。それでも小口径にて子持ち銀河M51の撮影に挑戦してみました。この銀河は、直径でM101の1/3程度です。でも視等級は8.1等と、比較的明るいので人気の天体です。

りょうけん座に位置していますが、おおぐま座(北斗7星)のミザールからアルカイドの線を中心とすれば、M101とはだいたい線対称の位置にあります。

例によって赤道儀の性能を生かして2日間にわたる長時間露光です。日々月の勢力が増してくる時期なので、初日3/14(金)にCBPによるブロードバンド撮影、2日目3/15(土)は光害カット効果の高いL-extremeフィルターによるナローバンド撮影です。

初めての子持ち銀河(M51)写真

仕上げた写真が下記です。

2024/03/14,3/15撮影 子持ち銀河(M51)

<諸元>

  • 機材:
    ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII
    (D=70mm,f=420mm), IRCutフィルター,
    CBPフィルター(ブロードバンド撮影),
    L-eXtremeフィルター (ナローバンド撮影),
    AM5赤道儀  ,QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
  • 支援ソフトウェア:
    ステラリウムによる自動導入 ,
    SharpCapによるプレートソルビング ,APTによるディザリング撮影 ,
    PHD2による2軸オードガイド  , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
  • 撮影地:
    神奈川県茅ヶ崎市自宅近く農道(1) , 神奈川県茅ヶ崎市自宅庭先(2)
  • 撮影日時:
    (1)ブロードバンド撮影:2024/03/14(金)08:01 ~ 2024/03/15(土) 00:51
    (2)ナローバンド撮影:2024/03/15(土)21:22 ~ 2024/03/16 (日)03:19
  • 撮影条件:
    Gain200 , センサー温度 -20℃ 
    (1)240sec x 53コマ(露光時間212分)
    (2)240sec x 48コマ(露光時間192分)
    総露光時間:404分
  • 編集(*1):
    PixInsightで(1)(2)各々加算平均合成後GraXpertまたはABEでムラ補正し、ブロードバンド画像の星無し画像にナローバンド画像の星無し画像から取り出したHa画像をブレンド。BXT・彩度増加・Histgram調整・Curv調整・デノイズなどの編集後、ブロードバンド画像から取り出した星画像と合成。
    トリミング(フルサイズ換算焦点距離1640mm相当)

いつもの近征地と機材

親銀河の腕の構造、HII領域のつぶつぶ、親子間の茶色い領域も表現できました。私の光学系で長手の大きさ11' 程度の銀河がこのぐらいになれば、自分では満足レベルです。

M51の構成としては、親銀河はNGC 5194、すぐ近くの伴銀河はNGC 5195というNGC番号です。地球からはおよそ3700万光年の距離にあります。M51銀河群は、5°ほど南のM63およびNGC 5023、NGC 5229などを含んでいるそうです。

初日近くの農道に近征した理由は、早い時間帯から撮影開始したかったからです。自宅庭先だと電線通過待ちが発生するため21:30頃からしか開始できないと予測していたので。ところが、BLINKで目視チェックすると、21時前ぐらいまでのコマ画像は、東の空の光害まみれで酷い状態でした。結局21時ごろからの写真しか採用できませんでした。ここの東の空は、インターチェンジの明かりと鉄塔の明かりが酷いということを思い知らされました。

2日目の庭先ナローバンド撮影は、ある程度予想通り、電線通過待ちが発生しました。ところが、この通過待ち、2回発生。南側に斜めに走る細い電線には被らないと思っていたのですが、途中から被ってきました。これによりコマ数を稼げず、子午線反転後もかなり撮影せざるを得ませんでした。

編集(PixInsight)ーWBPPエラー

電線通過待ちにより2日目の撮影も苦労しましたが、編集も苦労しました。ブロードバンド画像の方のスタックと色合わせは問題有りませんでしたが、ナローバンド画像のスタックがどうしてもWBPPでうまくいかず、星位置合わせ~ImageIntegrationまで手動で行う羽目になりました。初めてのことで調査のために時間を要しました。

ImageInetgrationで起きたエラー

「weightの設定値0.005によって(48枚中)47枚除外した。最低3枚はintegrationに必要」というエラーです。この値を小さくしてみてWBPPリトライしても全く直らず。ちなみにWBPPには、キャッシュ機能が有って、設定変更や画像の増減を行ってから、同じフォルダ指定で実行し直せは、可能なデータは全てキャッシュから拾うので大幅に処理時間が軽減されます。ただ、やり直すときは必ずWBPPを起動しなおさないといけません。これをやらないとエラーのオンパレードになったりします。

例によってフォーラムの記事をあたっていると、同様の人がいました。この人の場合、PixInsightの中の人の回答で、「ImageIntegrationのMinimum weightを0にすればこの検査が無効になるので、エラーは出ないよ」と書かれていたので、私もまず、0では無く小さくしながらやり直してみましたが、全く直りませんでした。そこで仕方なく0にしたところ、エラーは出なくなり、最後のDrizzleIntegrationまで完了しました。

WBPP:Lights画像ImageIntegration設定_Minimum weight

ところが、ImageIntegration画像とDrizze1x画像を見てみるとお話しになりません。(下図)

左:ImageIntegration後ののモアレ画像 右:1xDrizzleIntegration後のNG画像

ImageIntegration画像は格子状のモアレが盛大に出現。1xDrizzleIntegration画像はノイズやフラット補正前の構造が増幅されている感じです。

フォルダ内画像を確認してみると、calibrationでdebayerされた画像は問題無いのに、registered画像ではモアレが出現していましたので、StarAlignmentで生じたアーティファクトだとわかりました。このモアレはDrizzleIntegrationでは起きないと分かっていたのですが、上記右の画像では使いものになりません。

さらに調べていくと、「StarAlignmentのInterpolation-Pixcel Interpolationで、Cubic B- Sprine Filterを選択すれば、Pixcel補間の質は落ちるがモアレが軽減される」という情報が有ったので、これをやるために、手動でStarAlignmentー>LocalNormalizationー>ImageIntegrationをやり直してみました。

ところがそれでも、Minimum weight=0.005(デフォルト)だと、上記と全く同じエラーが出て停止しました。0にしてみるとエラーは出なくなり、Integration画像から無事モアレが消えました。見た目の品質も問題無さそうなので、この画像を使って編集を進めました。

今思えばWBPPでのエラー解消のため、ImageIntegrationのMinimum weightを小さくするのでは無く、ひょっとしたら逆にデフォルトの0.005より大きくしていけば直る可能性があったのかもしれません。次回同じことに直面したら試してみよう。

ちなみに、手動でImageIntegrationプロセスを実行する場合、Minimum weightはメニューに無いので、「Edit Instance Source Code」画面を開いて「P.minWeight」を変更します。(下図)

ImageIntegrationのEdit Instance Source Code

今後ナローバンド撮影ではコマ当たりの露出時間を増やす必要が有りそうです。StarAlignmentで少量回転したことによるノイズと画素配列との干渉は、相対的にノイズを減らせば軽減できるようだからです。

編集(PixInsight)ーCombineHaWithRGB Script

もう一つ。銀河の腕に存在するHII領域(赤いつぶつぶ)を強調する目的で、Ha画像をブレンドするのであれば、いつも使っているNBRGBCombination Script以外にも「CombineHaWithRGB Script」が使えそうなので、試してみました。

下記を参考にしましたが、この記事ではリニア段階で行うと書いてあるので、BXTの前に各々の画像で実施しました。大変手軽で使いやすいと思ったので今後の私の標準にします。

deepskystudio.works

パラメータ変更が即プレビューウィンドウに反映されるのはNBRGBCombination Scriptと同じですが、プレビューウィンドウの拡大ボタンが何段階か押せるので拡大した状態で確認しながら設定変更できるのが便利でした。

効果はNBRGBCombination Scriptと大差無い気がしました(あくまで私見)。

それと、「Remove H-Alpha BackGroud Noize」というメニューが有り、上の方にあるMaskにマスク画像を設定しておけばマスクをかけてHa画像の背景ノイズを低減できますので、今回これを使いました。

画面上に「Linear Image」のチェックが有るので、これをはずせばノンリニア画像にも適用できそうですので、各々BXT後の画像でブレンドした方が、より効果が上がるかもしれません。次回試してみます。

銀河の位置

最後にアノテーション画像と銀河の場所を示す星座絵です。

アノテーション画像(クロップ無し)

子持ち銀河(M51)の場所

 

*1:編集方法はあまりに流動的且つ実験的なので今回からは概要だけ掲載します

おおぐま座の回転花火銀河M101_再編集

2/28と3/9に撮影したM101について、3/9の方のブロードバンド撮影写真をDrizzle Integrationして再編集してみました。DrizzleをEnable、Scale=1にチェック入れて、WBPP Scriptをやり直しました。

出来上がったDrizzle Integrationされたブロードバンド画像のMasterLightファイルと、通常のIntegrationしたナローバンド画像をブレンドしました。

色合わせが大きく改善しました。これほど効果が有るとは驚きでした。下記が仕上げた写真です。

2024/02/28,2024/03/09撮影 回転花火銀河(M101)

<諸元>

  • 全て2024/3/10の記事に同じ。
  • 但し編集で使用したブロードバンド画像はPixInsightのDrizzleIntegration(Scale=1)したMasterLight画像

昨日の写真と比べてみてください。

webkoza.hatenablog.com

自然な色が出たと思っています。SPCCによる色合わせがうまくいったため、マニュアルでの色補正は、全体調整程度しかやっていません。こうなるともっと銀河内のHII領域の赤色を出したくなりますが、それをやるには撮影したナローバンド画像は露光時間が足りないようです。PixInsightのNBRGBCombination Scriptを使いましたが、HaとOIIIのブレンド比率をあまり高くしてしまうと、銀河全体が暗くなってしまうのでこれが限界でした。Pixmathによる他のロジックも色々考案されているようなので、今後色々試してみるかもしれません。

下記は、ブロードバンド画像に対して行ったSPCCによる色合わせ処理直後の画像比較です。左が通常Integration、右が1xDrizzleです。

通常Integrationと1xDrizzleのSPCC直後の比較

通常Integrationが緑っぽいのに対し、右の1xDrizzleでは見事に改善しています。下記はSPCCの結果とDBカタログ値との相関を表すグラフの比較です。右の1xDrizzleの方が斜めの線付近に密集しており、相関が強いことがわかります。

通常Integrationと1xDrizzleのSPCC結果比較

それと、昨日の記事では星像がおかしい星があると書きましたが、これについては分離したStarMask画像のストレッチを強くかけ過ぎたことが主な原因のようです。今回BXT工程の最後に行うLRGBCombination前のストレッチはかなり慎重に行いましたので、それなりに改善していると思います。

下記の画像は、星の周辺収差が若干残っていますが、横長のクロップサイズを少し大きくして、切り捨てていた銀河NGC5486とNGC5422を追加表示させてみました。

 

おおぐま座の回転花火銀河M101

昨日3/9(土)の茅ヶ崎市の夜は、最初雲が出ていましたが、21時頃から無くなりました。予報より雲が無くなるのが遅かったとは言え、絶好の撮影日和でした。

月の出ている2/28(水)にナローバンド撮影を行っていた回転花火銀河(M101)の、この日はCBPフィルターによるブロードバンド撮影を行いました。

この銀河も去年5月に、スカイメモを使って四苦八苦して撮影しています。

webkoza.hatenablog.com

M82,M82同様AM5赤道儀を使って露光時間を大幅に増やしました。またナローバンド画像とブロードバンド画像のブレンドも行いました。

下記が仕上げた写真です。

2024/02/28,2024/03/09撮影 回転花火銀河(M101)

<諸元>

  • 機材:
    ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII
    (D=70mm,f=420mm), IRCutフィルター,
    CBPフィルター(ブロードバンド撮影),
    L-eXtremeフィルター (ナローバンド撮影),
    AM5赤道儀  ,QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
  • 支援ソフトウェア:
    ステラリウムによる自動導入 ,
    SharpCapによるプレートソルビング ,APTによるディザリング撮影 ,
    PHD2による2軸オードガイド  , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
  • 撮影地:
    神奈川県茅ヶ崎市自宅庭先
  • 撮影日時:
    (1)ナローバンド撮影:2024/02/28(水)21:26 ~ 2024/02/29(木) 00:48
    (2)ブロードバンド撮影:2024/03/09(土)21:56 ~ 2024/03/10 (日)02:38
  • 撮影条件:
    Gain200 , センサー温度 -20℃ 
    (1)240sec x 42コマ(露光時間168分)
    (2)240sec x 64コマ(露光時間248分)
    総露光時間:416分
  • 編集:
    PixInsightで(1)(2)各々加算平均合成後GraXpertでムラ補正→ブロードバンド画像をSPCCで色合わせ→ナローバンド画像をブロードバンド画像に星位置合わせ→ブロードバンド画像をStar画像(①)とそれ以外(②)に分離しそれぞれBXT→ナローバンド画像からStarを除去した画像にBXT(③)→③からhαとOIII画像を抽出し②にブレンド(④)→①(BXT後のノンリニアStar画像)に彩度増加などを行い、④(ブレンド後のノンリニア星以外画像)に彩度増加・Histgram調整・Curv調整・デノイズなどの編集を行ってから合成→トリミング(フルサイズ換算焦点距離1260mm相当)

かなりS/Nが向上し、銀河も滑らかに仕上げることができました。一応目的達成と思っています。

減点対象を上げるならば、ネット上の超高解像度写真と比較すると、銀河内の星やHII領域の色が少しおかしい気がする点です。今回SPCC後のブロードバンド画像の色が、緑っぽくなりました。トーンカーブ補正で手動補正しましたが、この影響だと思います。また、星の形も少しおかしなものが有るようです。

丹羽さんの楽しい天体観測では、「SPCCでは色を正しく出すためにDrizzle必須」と書いてありました。ぜひ時間が取れたら試してみたいと思います。Drizzle Integrationでは上記2つとも改善が期待できそうです。ただ、ナローバンド画像はディザリング撮影を行っていないので、ブレンドするためにはブロードバンド画像のWBPPにおけるDrizzle ConfigurationのScaleは1を指定すれば良いのかな。。

それと、APTを使ってディザリング撮影をしたおかげで、縮面ノイズは出ませんでした。APTは今回初めて使ってみましたが、プレートソルビングがうまくいかず、ASTAPのエラーが出た模様。すぐには解決できそうにないので、今回はSharpCapの「プレートソルブ後再同期」で精密導入を行ってから、ディザリング撮影のみをAPTで行いました。撮影ツールとしてのAPTは全く問題無く、センサー温度を自動でゆっくり上下させることができるのが便利です。欲を言えば、Sharpcapのようにその時のクーリングパワーをモニターできれば安心です。

APTはNINAほど重くありませんが、撮影中にステラリウムを動かしていると、ストールする時がありました。やはり私の非力なノートPCでは、撮影中はステラリウムを終了させることは必須要件のようです。

下記は横長にクロップした写真(フルサイズ換算焦点距離960mm相当)にアノテーションを入れた画像です。

M101内に9個のHII領域が表示されています。下の方の矮小銀河NGC5474はM101の最も近い伴銀河だそうです。

去年の2023/05/20に新天体捜索家として世界的に有名な板垣さんが、この銀河内で発見し、今ではかなり暗くなった超新星SN2023ixfが写っていました。新星が発見される直前に撮影した前回の写真に並べてみました。

左:2023/05/17撮影 右:2024/02/28,03/09撮影

発見された直後の2023/05/26に撮影されたここの写真を見てみると、今回の私の写真ではすぐ上に位置する暗い恒星との相対的明るさがずいぶん暗くなっているのがわかります。

最後に星座絵を掲載しておきます。M81,M82とM101は全て北斗七星を含むおおぐま座に位置しています。

M81,M82,M101の場所

 

PixInsightにおけるstarnet2の仕様など

茅ヶ崎市では天気が悪い日が続いています。明日の金曜日の夜は大丈夫そうですが、久しぶりの出社日。天体撮影は土曜日までおあずけです。M81,82に続く春の銀河の次のターゲットは当然回転花火銀河M101になるわけですが、実は月の有る日に既にナローバンド撮影は終えています。残るはブロードバンド撮影。何時間撮影できるか。。

ということで、今回は画像編集ネタです。と言っても例によって私の備忘録的な記事です。前回トラブルとなった、PixInsightのstarnet2で、NGC3077の銀河中心部が一部星画像側に混入してしまい、星消し画像側のNGC3077がおかしくなった件、その後調べていると、改善方法がわかって来ました。

starnet2の仕様について

starnet2は、リニアデータとノンリニアデータどちらにも使用する事ができます。私の場合、BXT前のリニア画像でstarnet2を使用しています(「Linear Data」にチェックを入れる)。この時対象画像にstfのauto stretchをかけた状態で実施していました。stfなので動作には影響を与えないと思い込んでいたわけですが、なんと実は実施結果はstfのstretchの状態に左右される仕様なのだそうです。この事実は想定外でした。

そして、さらにstfのstretchをかけない状態(リセットを押した状態)でstarnet2をかける事もでき、その場合「Edit Instance Source Code」(下図の赤丸)を押すと、2つのパラメータを設定できます。これにより、結果を調整することができます。

変更可能な2つのパラメータは、starnet2オブジェクトのshadows_clippingとtarget_backgroundの2つのプロパティです。前者は変更しても変化がわかりませんでしたので、後者のtarget_backgroundを変更することにしました。

次の図は、stf auto stretchをかけた状態でstarnet2を実施した星消し画像のNGC3077部分。その次の図はtarget_background=0.05にして実施した星消し画像のNGC3077部分です。

stf auto stretchをかけた状態でstarnet2を実施

target_background=0.05にしてstarnet2を実施

上の方は、銀河中心部がモザイク状に暗くなっています。下は問題ありません。下の設定で進めればNGC3077も写真に含めることができるはずなのですが、全体のバランスを考えると、そう単純では無いようです。

target_backgroundを小さくしていくと、星画像側に星以外が残る現象は軽減するのですが、小さくし過ぎると、星消し画像側の輝星が有った位置にハロのような薄いドーナツリングが現れました。

悩ましいのは、M81のように星と大きさの区別が難しいHII領域(つぶつぶ)を持つ場合です。この場合starnet2では星消し画像側全部のつぶつぶを残す事ができない状況になります。この辺の匙加減が、target_backgroundによって変わるわけです。私の光学系で撮影したNGC3077のようにツブツブが写っていない銀河と、つぶつぶが写っている銀河が混在している場合は特に難しいと思います。今回の写真では、ナローバンド撮影したLight画像の星消し画像側に「つぶつぶ」の全部が残って欲しいのですが、結局上記ドーナツリング現象により完全には無理でした。妥協して、NGC3077も含めた3つの銀河が写る写真を仕上げることはできますが、途中で面倒になってやめてしまいました。

それと、最新版では複数のリニア画像を一気に星消しを行うコンテナ機能が実装されてるそうです。この機能は、彗星写真を彗星核基準でスタックする場合に使えるようです。去年撮影したztf彗星の写真で試してみたいです。かっこいい直線状のイオンテールが浮かび上がれば感動なんですけどね。

去年の通常スタックしたztf彗星の写真は下記。時間が無くて極軸はテキトーなので星は流れています。

GAME Scriptについて

今回上記starnet2の仕様を調査しながら実験を行う過程で、どうしても星画像側に混入してしまった「銀河のかけら」の輝度を大きく減らすために、局所的な自由マスクを作れれば良いなあと思いました。私の場合こういったマスクは、結露などによる円形状のシミを取り除くために、PaintShopPro上でマスク画像を作成してからPixInsightのrange selectionを使ってマスク境界をぼかすということをやってきました。でも例によって丹羽さんの楽しい天体観測で、GAME ScriptなるツールをインストールすればPixInsight上で同じことが実現できることを知りました。

masahiko.me

これは大変便利です。もうPaintShopProをいちいち立ち上げ無くても良くなるからです。局所的な自由マスクが作れるので、変な使い方をすると写真を「作ってしまう」ことになりかねないということは常に念頭に置いておく必要はあります。

さっそくインストールして使ってみました。ほんとわかりやすいGUI で、使いやすかったです。

 

おおぐま座のボーデの銀河と葉巻銀河

小口径望遠鏡でのDSO撮影には厳しいシーズンとなりました。去年の1月からはじめた直焦点撮影ですが、冬の天の川が去った後、5月に冷却カラーCMOSカメラを購入して、SkyMemoSWを使って四苦八苦しながら銀河撮影に挑戦しました。その時の記事は下記です。

webkoza.hatenablog.com

小口径でも狙いやすい、視直径が比較的大きくて明るい銀河の写真3枚です。今回は、この中のM81(ボーデの銀河)M82(葉巻銀河)をAM5赤道儀を使って、露光時間を大幅に増やすという試みです。でもまだフルタイムで毎日仕事している身にとって、夜半過ぎまでの撮影はなるべく避けたいので、2日間にわたって撮影しました。

仕上げた写真

2024/02/27,2024/03/03撮影 M81とM82

<諸元>

  • 機材:
    ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII
    (D=70mm,f=420mm), IRCutフィルター,
    CBPフィルター(ブロードバンド撮影),
    L-eXtremeフィルター (ナローバンド撮影),
    AM5赤道儀  ,QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
  • 支援ソフトウェア:
    ステラリウムによる自動導入 ,
    SharpCapによる撮影とプレートソルビング ,PHD2による2軸オードガイド 
     , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
  • 撮影地:
    神奈川県茅ヶ崎市自宅庭先
  • 撮影日時:
    (1)ナローバンド撮影:2024/02/27(火)20:55 ~ 2024/02/28(水) 00:33
    (2)ブロードバンド撮影:2024/03/03(日)20:14 ~ 2024/03/04 (月)23:45
  • 撮影条件:
    Gain200 , センサー温度 -20℃ 
    (1)240sec x 48コマ(露光時間192分)
    (2)240sec x 38コマ(露光時間152分)
    総露光時間:344分
  • 編集:

    PixInsightで(1)(2)各々加算平均合成後GraXpertでムラ補正→ブロードバンド画像をSPCCで色合わせ→ナローバンド画像をブロードバンド画像に星位置合わせ→ブロードバンド画像をStar画像(①)とそれ以外(②)に分離しそれぞれBXT→ナローバンド画像からStarを除去した画像にBXT(③)→③からhαとOIII画像を抽出し②にブレンド(④)→①(BXT後のノンリニアStar画像)に彩度増加と星を小さくする処理を行い、④(ブレンド後のノンリニア星以外画像)に彩度増加・Histgram調整・Curv調整・HDRMT・デノイズなどの編集を行ってから合成→トリミング(フルサイズ換算焦点距離2300mm相当)

 

デュアルナローバンドフィルターのおかげでM81の腕にあるツブツブ状のHII領域も表現でき、電離した水素ガスによるM82の赤いスーパーウィンド(hα線)も良く見えていますが、まだS/Nが足りないと感じます。でも前回の写真と比べるとかなり表現力が増しました。あと2~3時間分ぐらいブロードバンド画像を撮り増したいです。

今回銀河のBXT処理はいつもより控えめにしました。また、M81の腕の構造を見やすくするためにHDRMultiscaleTranseformを行いました。ちょっと暗くなり過ぎた気もしています。

それと今回から、ムラ補正にGraXpertを使用します。過去の何枚かの画像で試してみましたが、ほとんどがデフォルト設定で期待通りの補正が出来てしまうのが凄いと思います。

物理的トラブル対策

FMA135を使ってバーナードループを撮影した時にトラブった、「①抜けやすいカメラ電源用シガーコネクタ」は、GNDの板バネが沈み込み過ぎないようにガラスクロステープを貼って暫定対策。「赤道儀やカメラのコネクタ部にストレスがかかってしまう事」に対しては、赤道儀のコネクタ面とカメラのコネクタ面に、柔らかい金属性のケーブルクランプを貼ってケーブルを保持する構造にしてバッチリです。

第一の編集トラブル

第一のトラブルとしては、ブロードバンド画像のIntegration後に、長時間撮影で良く聞く「妖怪縮面ノイズ」が出てしまいました。下記がIntegration直後STF Boostedした画像です。最初が写真の上の方で、2番目が下の方です。斜めに走る縮面ノイズがわかります。上と下で角度が異なります。上から下に向かって徐々に右回転しているように見えます。やはり赤道儀の運動由来のものなのでしょうか。ナローバンド画像では起きていないので、庭から北天高い位置を狙う場合の南側にある白色のLED街灯が関わっている?

ブロードバンド画像に現れた縮面ノイズ(上方)

ブロードバンド画像に現れた縮面ノイズ(下方)

このノイズはムラ補正では除去できそうにないので、どうしようかと思いましたが、とりあえず、気になっていた「マスターFLATに-20℃では無く-5℃の画像で代用している」事実を解消するべく-20℃でFLAT画像を撮り直してIntegrationやり直してみました。すると、なぜか「妖怪縮面ノイズ」はいなくなりました。(下図)

FLATを撮り直したらなぜかブロードバンド画像から縮面ノイズが無くなった

理由は全くもって不明です。でも今度はFLAT補正が甘く、少し同心円状のムラが残りました。このムラはGraXpertで1発で除去できました。いずれにしても、この妖怪に対しては、ディザリング撮影が有効のようなので、APTを試してみようと思います。(NINAはかなりCPUパワーを食うのと機材を据え付けられない私にとって、自動シーケンス機能は過剰品質ですし。。)

第二の編集トラブル

第二のトラブルはstarnet2。星と銀河を分離して処理したのですが、ブロードバンド画像から取り出したStar画像に、NGC3077の淡い広がりが結構写り込んでしまい、ブレンド後の銀河画像との再合成でその部分が破綻してしまいました。しょうがないのでトリミングでNGC3077を含めない写真としました。前回は分離編集を行っておらずNGC3077も含めた写真に仕上げていました。

第三の編集トラブル

そして3つ目はブロードバンド画像のWBPP処理時、LOCAL NORMALIZATIONでWarningが発生し、Light Frame の Image Integrationで9枚が除外されたこと。

流石にログだけ見ても、原因は特定できそうにありません。BLINKで目視選別したのが47枚だったのに対し、38枚でIntegrationされました。36分も無駄になってしまいました。。

アノテーション画像

M81の視直径はこの写真からは長手18' ほどに見えますが、ステラリウムでは26'54"となっていました。

 

野鳥の観察記録_春先取りのメジロなど

2024/2/24(土)撮影:小出川の野鳥

まずは、3連休中日の2/24(土)の最後に散策した近所の小出川の野鳥達です。最初は、木に留まったツグミ

2024/2/24撮影 樹上のツグミ

 

河原の茂みにいたアオジ

2024/2/24撮影 アオジ

いつもの場所にいたキセキレイ

2024/2/24撮影 キセキレイ

下の写真は、なんという鳥かわからずに撮影したバンの幼鳥です。幼鳥のくちばしは赤く無いということを後で調べて知りました。

2024/2/24撮影 バンの幼鳥

良く見ればくちばし以外は親とそっくりでした。

2024/2/24撮影 バン

最後はカワセミのオスです。たまに見えない所にダイブする着水音が聞こえました。

2024/2/24撮影 カワセミ

この他にカモ類のコガモマガモ。それとカワラヒワホオジロを観察できましたが、どれも酷い写真でした。。

2024/3/3(日)撮影:相模川の野鳥

今日は少し遠出して、朝から初めて相模川自然の村公園に行ってきました(遠出と言っても圏央道使うと30分です)。例によってコンデジと一脚を持ってブラブラと散策。

ここは上大島キャンプ場の隣にある公園です。公園内や相模川沿いを散策する事ができます。天気も良くて暖かく気持ちの良い散策でした。

駐車場に車を停めて開始したのは9:00頃でした。最初の写真は、キャンプ場入り口前のヒヨドリ。至近距離で撮れました。

2024/3/3撮影 ヒヨドリ

キャンプ場のすぐ上流の河原をしばらく観察していると、小さい鳥が結構いました。その中のホオジロです。

2024/3/3撮影 ホオジロ

そしてタヒバリ。水辺の茂みから出て来てエサを探し始めました。初撮影です。ビンズイとは違うなあ。。と違和感を覚えながら撮影しました。ピントが甘いのが残念。

2024/3/3撮影 タヒバリ

同じ場所にセグロセキレイも結構いました。こちらもさかんにエサを探している様子でした。

2024/3/3撮影 セグロセキレイ

カモ類は、対岸にコガモホシハジロキンクロハジロを観察できました。遠かったのでまとまな写真はコガモだけ。

2024/3/3撮影 コガモ

キャンプ場から下流の河原沿いに広がる松林には、コゲラのドラミング音がたくさん聞こえました。また常にシジュウカラが囀っていました。

2024/3/3撮影 コゲラ

キャンプ場横を通り過ぎて上流側の河原にもシジュウカラ

2024/3/3撮影 シジュウカラ

この河原では、シメとホオジロ、モズのオスも見つけました。

2024/3/3撮影 シメ

2024/3/3撮影 ホオジロ

 

2024/3/3撮影 モズのオス

そして今回のメインキャスト!桜のメジロです!キャンプ場の上流側駐車場の河津桜はまだかなりの花びらが残っていました。この鳥は梅や桜の中で絵になりますねえ。結構粘った末のベストショットです。

2024/3/3撮影 メジロ

キャンプ場の上流側から岸の方向の公園を通って戻ってくると、モズのオスが警戒モード。

2024/3/3撮影 モズ

駐車場前まで来ると、最初に撮り逃したエナガの群れが撮影チャンスでした。いままでで一番可愛く撮れました。

2024/3/3撮影 エナガ

車に乗ろうとしたら駐車場前の茂みから、大きな声で「チョットコイ」と何回も。そこで車に乗るのをやめて、後ろに回りフェンス越しに探したのですが、声の主であるコジュケイを目にすることはできませんでした。

 

<初撮影>
タヒバリ

 

<編集>

  • CANON DPP:
    トリミング・明るさ調整・トーンカーブ補正・彩度増加・尖鋭化処理・部分調整
  • PixInsight:
    TGV Denoise

 

探鳥散策:真冬の相模川2

昨日の探鳥散策第2弾です。11時過ぎに相模原市相模川沿いを離れ、向かったのは相模大堰。ここは神奈川県の取水堰で管理橋が架かっています。管理橋は自転車と徒歩で渡れます。

以前1回だけ来たことが有り、今回で2回目です。

webkoza.hatenablog.com

前回は管理橋の上から水鳥だけを観察したのですが、今回は周辺の相模川沿いも散策しました。

まずは管理橋の上から撮影した水鳥達です。最初はヒドリガモ。今回はアメリカヒドリは見つけられませんでした。

2024/02/25撮影 ヒドリガモ

前回より近くを泳いでいるカワアイサを撮影できました。

2024/02/25撮影 カワアイサ

いつものように潜水採餌している迫力のある顔のカイツブリ

2024/02/25撮影 カイツブリ

下の写真は分かりにくいのですが、キンクロハジロだと思います。

2024/02/25撮影 キンクロハジロ

ヨシガモの小群がコガモに混じって休んでいました。

2024/02/25撮影 ヨシガモ

ここからは川沿いの散策で撮影した野鳥たちです。シジュウカラは今回もたくさん観察できました。

2024/02/25撮影 シジュウカラ

そしてモズのオス。こちらを睨んで威嚇してきました。

2024/02/25撮影 モズのオス

相模川本流からの流れ込みや池が多少あるため、カワセミも多く観察できました。初めて2羽飛んでいる所を見れました。おそらく縄張り争いだったと思います。すぐに1羽が離れていきました。

2024/02/25撮影 カワセミのメス

カワセミは下くちばしが赤いのがメスで黒いのがオスだそうです。この個体はメスですね。

ジョウビタキのオスが1羽同じところを行ったり来たり。こちらを警戒しているのだと思いますが、なかなかじっとしてくれません。そうこうしているうちに、ジョウビタキが低い位置に止まる木のてっぺんに目をやるとなんとシメ。こちらはなんなく撮影。

2024/02/25撮影 シメ

ジョウビタキのオスがうまく撮影できず、あきらめて移動しかけた時、目の前にジョウビタキのメス。メスは警戒心が低くて助かります。至近距離で撮影できました。

 

2024/02/25撮影 ジョウビタキのメス

最後にもう一度戻ってみるとジョウビタキのオスがまだいました。さっきよりは至近距離で何とか撮影したのが下の写真です。

2024/02/25撮影 ジョウビタキのオス

今回は何枚かの写真で、初めてDPPの「部分調整」で周辺減光を演出してみました。

 

<編集>

  • CANON DPP:
    トリミング・明るさ調整・トーンカーブ補正・彩度増加・尖鋭化処理・部分調整
  • PixInsight:
    TGV Denoise