去年も撮影した有名な網状星雲を、2つの光学系で撮影しました。今回はどちらも
L-extreme フィルターを使用しています。この天体を庭から撮影するには電線通過待ちが発生するので、遅い時間帯からのスタートとなってしまいました。
下記は去年撮影の「いの字」です。
webkoza.hatenablog.com
い
まずは7cm f6 の屈折鏡筒で撮影した写真です。
<諸元>
- 機材:
ASI294MCPro , BLANCA-70EDT(D=70mm,f=420mm)+KASAI 0.8xReduser,
IRCutフィルター,L-Extremeフィルター ,
AM5赤道儀 ,QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
- 支援ソフトウェア:
ステラリウムによる自動導入 ,
APTによるピント調整支援、PlateSolving、ディザリング撮影 ,
PHD2による2軸オードガイド , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
- 撮影地:
神奈川県茅ヶ崎市自宅庭
- 撮影日時:
2024/07/07(日)23:11 ~ 2024/07/08(月) 02:36
- 撮影条件:
Gain200 , センサー温度 -5℃
120sec x 76コマ(露光時間152分)
- 編集(PixInsight):
WBPP/GraXpert/SPCC/Starnet2/BXT/GHS/ScreenStars等
フルサイズ換算680mm相当にトリミング
去年の写真と比べてみると、だいぶ良くなりました。三角から南に伸びる足も表現でき、何より青が良く出て、カラー解像度も増しました。欲を言えば中央部の下の方の淡い部分がもっと表現できれば迫力が増すと思います。
次はピッカリングの三角と呼ばれる「いの字」内中央右側にある部分をR200SSを使って撮影した写真です。
<諸元>
- 機材:
ASI294MCPro , R200SS(D=200mm,f=800mm)+コマコレクター,
IRCutフィルター,L-Extremeフィルター ,
AM5赤道儀 ,QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
- 支援ソフトウェア:
ステラリウムによる自動導入 ,
APTによるピント調整支援、PlateSolving、ディザリング撮影 ,
PHD2による2軸オードガイド , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
- 撮影地:
神奈川県茅ヶ崎市自宅庭
- 撮影日時:
2024/07/06(土)00:52 ~ 03:20
- 撮影条件:
Gain200 , センサー温度 -5℃
240sec x 22コマ(露光時間88分)
- 編集(PixInsight):
WBPP/GraXpert/SPCC/Starnet2/BXT/GHS/ScreenStars等
フルサイズ換算1810mm相当にトリミング
最初のいの字の写真とは色合いが結構異なってしまいました。
突っ込みどころ満載です。星のピントはズレてるし、肝心の三角の下切れてるし。せめてカメラを90℃回転して撮影すべきでした。デュアルナローだと光条が出る鏡筒ではピントのズレが目立っちゃいますね。長時間やる場合はまじめに何回もピント合わせ必要だと痛感。そしていいかげんバシっと上を北に合わせろって天の声。。
WBPPで10枚もrejectされたのは、ピンボケが原因かもしれません。
7/7撮影の写真と比べると、あまり星雲自体の解像感は変わらない気がしますが、こちらはだいぶ露光時間が短いです。にも関わらず、これだけ写るのは明るい鏡筒だからでしょうね。
編集苦労話
ここからは備忘録です。
今回、最初に「いの字」を編集し、その後「ピッカリングの三角」を編集したのですが、どちらも編集に大変苦労しました。理由は両方ともWBPPの初期設定ではうまくIntegrationされなかったためです。
Integration後の画像は緑が強く出ていて、カラーバランスがおかしいなんてレベルでは無く、赤が全く存在しないような画像になっていました。下記は最初debayerdフォルダーに残っていた1コマ分の「いの字」の画像です。
あきらかにおかしいので、***_ProcessContainer.js ファイルをPixinsight上で実行して1プロセス毎に追っかけてみると、calibrationで作成された画像を使ってdebayerした後に上記のようになっていることが判明。思い切ってcalibration画像では無く、もともとのfitファイルを指定してdebayerしたところ、いつも見ている画像になったので、以後1プロセスずつ手動で仕上げました。calibrationしていないので、当然アンプグローが残っていましたが、大胆にcropして解決。幸いL-Extremeフィルターによるゴーストや周辺減光も淡いので何とか取り除けました。
次に「ピッカリングの三角」ですが、こちらも全く同様でした。calibrationしないのも何なので、ためしに、MasterDark OptimizeをONにしてCaibrationし、1プロセスずつやり直したところ、緑一色状況は改善されました。しかし、このオプションはDark画像がLight画像と異なる露光時間の場合に有効だそうで、同じ露光時間の場合に適用すると色々弊害があり、その一つがアンプグローが消えないことだそうです。
今回もアンプグローは残っていました。「MasterDark Optimize」についてさらに詳しく調べる必要もありそうです。
また、緑一色状況は改善されたのですが、「ピッカリングの三角」は明るい光学系でしかも、4分/コマと2倍なので、L-Extremeフィルターによるゴーストも目立っており、Flatが合っていない感じでした。光害カブリも以外に目立っていましたが、一番苦労したのはこのフィルターによるゴーストの除去でした。
実はピッカリングの三角の前に彼岸花星雲(NGC6357)中心部をR200SSで撮影したのですが、Integration後の画像を見て編集をやめました。網状星雲のような緑一色状況では無かったのですが、上記ゴーストが星雲全体と被っており、除去できる気がしなかったからです。
ところでここで疑問が。。L-Extremeフィルターによるゴーストは、こちらで考察したように、鏡面状のフィルター面とフィルタードロワー内乱反射が原因だと考えていたのですが、R200SSでも全く同じ形状のゴーストが出たわけです。となるとフィルタードロワー内の乱反射では無かった(R200SSではドロワーを使っていないから)ことになります。
これも究明する必要があります。BLANCA-70EDTとR200SSによる私のシステムで共通な部分は、カメラですが、まずはカメラのセンサー直前に無駄に付けっぱなしにしているIRカットフィルターを疑ってみようかと思います。