楽しい記憶

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オリオン座のスター達と撮影方法

今日は、オリオン座のスター達です。オリオン座は、やはり今が一番撮影し易い時期ですね。三ツ星の真ん中で輝く1.65等星アルニラムの正中時刻は22時頃なので、19時頃から準備を始め20時頃から撮影開始すれば、うまく行けば子午線越えまでに2時間露光可能です(あくまで計画通りに行けば。。)。

これらの星雲は比較的明るい対象であることと、この日は月が無いので、茅ヶ崎市内のいつもの撮影場所(SQM 19.14 mag./arc sec2)で十分S/Nを確保できると考えて全体の色バランス重視でCBPフィルターを使いました。

木星雲と馬頭星雲

まずは、木星雲~馬頭星雲。全く同じ構図で9月の遅い時間帯に冬先取り撮影していました。

webkoza.hatenablog.com

この時は60分の総露光時間でしたが、今回はその倍の2時間露光して滑らかさと淡い部分の表現範囲を広げる目論見でした。しかしやはり思い通りにはいかないもので、撮影開始まもなく、出ないはずの雲が出て来て四苦八苦。かなり雲通過待ちもしましたが、途中からは中断も面倒なので撮り続け、結局歩留まり率は65%(42/65コマ)と酷い状況でした。M42も撮影予定だったので22時ぐらいでやめました。

下記が仕上げた写真です。

オリオン座アルニタク周囲の散光星雲(燃木星雲・馬頭星雲)

<諸元>

  • 機材:
    ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
    IRCutフィルター,CBPフィルター , AM5赤道儀  ,
    QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
  • 支援ソフトウェア:
    ステラリウムによる自動導入 ,
    SharpCapによる撮影 ,PHD2による2軸オードガイド 
     , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
  • 撮影地:
    神奈川県茅ヶ崎市自宅近く農道
  • 撮影日時:
    2024/01/06(土)19:41 ~ 22:02
  • 撮影条件:
    Gain200 , センサー温度 -20℃ 
    120sec x 42コマ(総露光時間84分)
  • 編集:
    PixInsightで加算平均合成後、SPCCにより色合わせを実施。星雲画像と星画像を分離して各々BXTや彩度増加などの編集をしてから合成。トリミング(フルサイズ換算焦点距離640mm相当)

前回より24分露光が増えただけですが、月が無かったこと、センサー温度を-5℃から-20℃にしたことが功を奏したのか、S/Nは明らかに向上しており燃木星雲の淡い広がりも表現でき、馬頭星雲周りのHII領域も滑らかに仕上がりました。前回はムラを除去しきれず、また周辺収差を除くためトリミングで誤魔化していましたが、今回はほぼノートリミング。これが理想の構図だと思っています。

オリオン大星雲(M42

続いてオリオン大星雲です。これまではEOS RP(フルサイズミラーレス一眼)でしか撮影したことが有りませんでした。

webkoza.hatenablog.com

今回初めてカラー冷却CMOSカメラでの撮影です。ここでトラブル。ポタ電のシガーコネクタから取っているカメラ用電源プラグが抜けやすいのは以前から気になっていたのですが、子午線越えのため自動導入をやり直したことによりケーブルが若干突っ張ってしまい、ルーズコンタクトになっていて気づいた時にはセンサー温度爆上がり。-20℃に下げるのは結構時間がかかるので、結局露光開始は23時ごろになってしまいました。ホントこのコネクタ何とかしたいものです。

下記が仕上げた写真です。

オリオン大星雲とランニングマン星雲

<諸元>

  • 機材:
    ASI294MCPro , BLANCA-70EDT+KASAI ED屈折用フィールドフラットナーII ,
    IRCutフィルター,CBPフィルター , AM5赤道儀  ,
    QHY5L-IIM+3cm 130mmガイド鏡
  • 支援ソフトウェア:
    ステラリウムによる自動導入 ,
    SharpCapによる撮影 ,PHD2による2軸オードガイド 
     , ASI Mount Serverによる赤道儀連携
  • 撮影地:
    神奈川県茅ヶ崎市自宅近く農道
  • 撮影日時:
    2024/01/06(土)23:03 ~ 2024/01/07(日)01:06
  • 撮影条件:
    A:Gain200 , センサー温度 -20℃  , 60sec x 17コマ(総露光時間17分)
    B:Gain120 , センサー温度 -20℃  , 5sec x 29コマ(総露光時間2分25秒)
  • 編集:
    PixInsightで露光時間の異なるA,B 2種類の画像を各々加算平均合成後HDRComposiotionで合成。SPCCによる色合わせ後BXTや彩度増加およびHDRMultiTransformationなどの編集後最後にトリミング(フルサイズ換算焦点距離1090mm相当)。

ランニングマン周囲の星雲やM42の周囲の淡い部分にいたるまで滑らかに仕上げることができました。

トラペジウム(*1)が写っているのがわかるでしょうか。トラペジウムは、普通に写真を撮っても、明るい中心部に埋もれて白飛びしてしまうため写りません。小口径の私の望遠鏡でも、アイピースを使った眼視であれば、鳥が羽を広げた中心で4つの星が美しく輝いているのが観察できます。望遠鏡を持っていてM42をまだ眼視観察したことが無い方(いないか。。)はぜひ観察してみてください。もちろん小口径では色は有りませんが。

わかりやすくするため中心部を拡大したグレースケール画像を掲載します。

トラペジウム

M42中心部を白飛び(*2)させずにトラペジウムを写し出すため、3,5,7,10secの各露光を行いました。そして画像編集では最適と思った5secを採用。通常の60secのIntegration画像と5secのIntegration画像を合成するという手法を用いました。この合成ProcessはPixInsightではHDRComposiotionといい、通常露光で白飛びした部分を自動的にマスキングして白飛びしていない方の画像に自然に置き換えてくれます。それでも普通にストレッチすると中心部は光に埋もれてしまうので、最後にいつものHDRMultiTransformation(明るい銀河や中心が明るい星雲で、中心部を減光して構造を浮かび上がらせる処理)で中心部を自然に減光しました。

やり方としては、いつも大変有用な情報を御提供いただいている丹羽さんの記事をそのままなぞっているだけです。

HDRComposiotionの後はSPCCにより色合わせを行ってBXTをかけています。この写真では星と星雲の分離はやっていません。理由はstarnet2では4つの星を星画像側にうまく残せなかったからです。

PixInsightの処理で最初に失敗したことがあります。それは、露光時間の異なる2種類の画像を、各々別々にWBPPにかけてしまったこと。Integrationした2つの画像をStarAlignmentで位置合わせしてからHDRComposiotionしたのですが、一部の明るい星の中心が、黒く破綻していました。露光の異なる画像を両方ともに1回のWBPPにかければこの位置合わせも自動で行ってくれるということに気づき、やり直したらうまく行きました。この時指定するBiasとFlat画像は当然2種類の露光画像共通です。

最後に、アノテーション画像です。なぜか「M42」という表記が無い。。謎です。トラペジウムは4つとも41番が振られています。

 

*1:オリオン大星雲の中心に存在する4重星

*2:写真の世界における線形領域外の状態を表す言葉。もともと線形情報である光の強さをデジタルに変換した画像の諧調を8bitで表現(実際にはセンサーのADCのbit数に依存)すると最大値は255となるので明る過ぎる対象は全て255になってしまう現象。つまり白飛びした対象からは何の構造情報も得られない。